忍足くんのオススメしてくれる本は、どれもこれも引き込まれるくらいに面白かった。
スリル感や、頭を使うコトは少ないけれど、幸せな胸がきゅんとするようなお話だ。
オススメの本の間を縫って、オススメされた本の作家さんの短編集を読み始めた。忍足くんにはまだ内緒にしていた。
この本を忍足くんが読んでいたのを知っていたから。
読み終わって、こんな話もわかるんだよ、と誇りたかったのかもしれない。
人だかりの中に、くん、とひとつ飛び抜けた姿。
あ、忍足くんだ。
それはすぐにわかった。
深い青色を見つけた瞬間に思わず手にしていた本を握りしめて、人の間を縫っていく。
丁度、さっき読み終わったばかりなのだ。
いつもは放課後にしか接点がないはずなのに、その時の私は浮かれていたに違いない。
だから、
「…!」
忍足くんの隣に、髪の長い可愛い女の子がいるコトに近づくまで気づかなかったんだ。
なんでかな、泣きそうだ
忍足祭7日目分
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