女子の威力は凄まじい。

去年もそれなりに経験していたはずなのに、すっかり失念していた。
というよりも、完全に他のコトに意識が向いていたのだ。



ようやくたどり着いた図書館の人気のない本棚。
額をぶつけるようにしてもたれ掛かった。
全く、俺も女々しいコトを考える。
ふぅ、とひとつため息を吐いた。

「(苗字さんに祝ってもらいたいなんて)」

都合のいい願いを持ちながら学校に来た訳だ。
それがどうだ。去年の今日のコトなんてすっかり頭にない俺には、おめでとうといってくれる女子を退かす術がひとつもなかった。
おかげで、廊下ですれ違うなんておろか、教室の外を歩いていく彼女の姿すら見るコトができなかった。



だから、こうして図書館に逃げ込んだ、と言ってもいいかもしれない。
人が少ないから、なんていいわけもいいところなのだ、実は。
彼女が当番の日なのは知っていた。
本棚の群れに入っていくときに思わず願った。
彼女が追いかけてきてくれますように、と。
まぁ、それは叶わずだった訳だが。




好きなら自分から声をかければいい、跡部や岳人にはそう言われたが、

「(出来てたら苦労なんてないわ)」

彼女を見るだけで鳴り出すこの心臓ではそんなコトはできそうにない。
なにかきっかけが欲しかっただけなのかもしれない。そろそろ部活に行かないと。
体を預けていた本棚から身を起こしてドアへ向かった。



図書館へ入った時と変わらず、彼女はカウンターにいた。こちらを見る様子はない。

…ちょっとでも、こっち向いてくれんかな。







風刺画みたいに滑稽かもね、
(あー、なにもできんかったなぁ)





















2014忍足祭り2日目

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