またやってしまった。

泣きながら去っていく女子の後ろ姿をぼんやりと見送る。
校舎裏なんて、いじめか告白か。はたまたサボりか。
前者だけど後者。告白された。
もちろん断ったけど。
がりがりと頭を掻きながら方向を変えた。
もちろん断ったけど、泣かれたのはそうじゃないらしいのだ。
部長らに言ったらまた怒られるんだろう。

アンタのコトなんて全く知らんし。

ぼろり、と呟いた一言で、わっと泣き出してサヨウナラ。
悪気なんてない。思ったコトを言うといつも、こうだ。
一度、部長らに告白現場を見られたコトがある。
今みたいに泣き出して去っていく女子をぼんやり見ていたら後ろから頭を叩かれた。
言い方を考えなさい。やて。
はいはい、悪いクセ悪いクセ。





教室に戻ると掃除は終わっていて、日直の苗字だけが日誌を書いていた。

「財前くん」

人の気配に気づいたのか、苗字がこちらを向いた。
もう一人の日直は見当たらない。
あいつ、部活もなんもないはずなのに。押し付けられたな。
それは容易に想像できた。

「財前く、」
「帰らんの?」
「え?」
「せやから、帰れば?って」

はっ、として口から音をだすのをやめた。
またやってしまった。他意はない。
二人でやるはずの仕事を一人でやる必要もないだろうと思っただけだ。
先生だって、それほど日誌を見ている訳でもないだろう。
それだけ、それだけを伝えようとしたのに。

さっきの今でこの失態。
悪いクセ、だけで済まない気がして、額を押さえた。
すまん、それだけでも言葉を出せば、苗字だって泣きそうな、むしろ泣いたりなんかしないんだろう。
一言、謝ればいい。

「ふふ…っ」

口を開こうと顔をあげるのと、苗字がなぜか笑いだすのは同時だった。

「なんやねん…」
「財前くんが面白くて」
「おもしろい…?」

意味が分からず続きを促す。
苗字は、泣きそうにも、泣いてもいなかった。

「心配してくれたんでしょ?」

でも大丈夫だよ。日誌だって押し付けられたんじゃないし。今、別の仕事をしてもらってるの。

苗字は確かに笑っていた。
呆けていた顔に、がっ、と熱が集まるのがわかった。

「…っ、あっそ」

帰る。と荷物だけ持って背中を向ければ、そこに向かって、また明日、と言葉が返ってきた。





剥き出しの凶器(仕舞えないけど、そこにも優しさ。)


















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