「(今日もおるし)」

苗字のこの顔がキライだった。
俺が横にたったのも気づかないくらいに眠りこけているのに、眉間に皺。薄く開かれた口。

苗字の、この苦しそうな顔がキライだった。
時たま苦しそうに体の向きを換えるのもキライ。

苗字はキライじゃない。(そう、どちらかと言えば好き。どちらかと言わなくても好き。)
だけど、このなにかに苦しんでる顔はキライだった。



初めてこの表情を見た時からだ。
心のどこかで「この表情を止めさせる方法」を探しては、いつの間にか手が出ている。
そうだ、きっとなにか怖い思いをするからこうして苦しんでいるに違いない。
なにも見ず、なにも感じず、なにも知らなければきっときっと苗字が苦しむコトなんてなくなるんだろう。
そう思うと、首にかけた手にじんわりと力が込められた。
はっ、と息が荒くなる苗字をぼんやりと見つめていると、頭の芯が冷えていく感覚に襲われる。
そして手を離して苗字を起こす。
何度これを繰り返しただろうか。

起きた苗字のありがとうは罪悪感を引き出すにはもってこいだ。
触れてしまわないように、今日もポケットに手を突っ込んだ。
苦しむ姿なんてごめんだ。
だけど、隣で笑う苗字がいなくなってしまう方が恐ろしい。





いっそ一思いに殺してしまおうか

















いっそ一思いに殺しておくれ の仁王サイド

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