「誕生日おめでと!」
「ありがとう!」
「これ、プレゼントっス」
「うわぁ!なんだろう」

開けていい?と聞いてきた彼女の言葉にこっくり頷いた。
朝一番とは行かなかったけれど、ちゃんと誕生日を祝えたコトは満足している。
そりゃあ、好きで付き合ってるんだ。喜ぶ姿を見たいと思うのは不思議ではないだろう。
嬉しそうにプレゼントを開ける彼女の姿を見て、改めてそう思った。

突然、ぴたり、と彼女の動きが止まった。
開けてしまわないのだろうか。
文字通り、ぴたりと止まった彼女を見て、首を傾げる。

「どうしたんスか」
「涼太くん…、これ本当に私へのプレゼントでいいの…?」
「へ?」

私へのプレゼントでいいの?ってどういう意味だろうか。
他の誰かの誕生日が近い訳でも、オレ用に買った訳でもない。
今日の名前の誕生日のために買ったものだ。なにかと間違える訳はない。

「これ、私がもらっていいの?」
「そりゃあ、名前のために買ったんスから」
「でも…、」

そこで言葉を濁す彼女はなぜだか浮かない顔。
もしかして壊れてしまっていたのだろうか。
気にくわないデザインだったのだろうか。
パッと考えて見ても、「そんなはずはない」の一言で片付いてしまう。
彼女を喜ばせようと、オレだって必死だったのだ。
だけど、彼女の態度を見ると不安だってわく。

「気に入らなかった?」
「ちが、違うの!そうじゃなくて、ね…」
「なんスか」

煮え切らない態度の彼女をじっと見つめる。
居心地が悪いのか、すぅ、と視線をずらすも、それじゃあ無駄。
それでも見つめ続けるオレに観念したのか、重そうに口を開いた。

「涼太くんはさ、束縛しない子が好きなんだよね…?涼太くんだって、束縛しないって言ってたよね…?」
「…うん、そッスね」

ソクバクなんて、しねぇッスよ。
今まで付き合ってきた女たちのコトを思い出してげんなりした。
人にされてイヤなコトはしちゃあいけません。小学校の先生に教えてもらったそれに習って、オレだってそうしないって決めてきた。
まぁ、実のところ、名前には少しソクバクしてもらっても構わない、なぁんて。(居心地がいいのだ。)

「わ、私、期待しちゃうよ…?」
「期待?」
「束縛、してもいいのかなって」
「…え?」

ほんのり赤くなった頬を隠すようにうつむいた名前の髪を見つめる。
どういうコトだ、頭が追い付かない。
誕生日を祝って、プレゼントを渡して、それを開けたら束縛しちゃうかもって?
一体どこでルートが変わったのか全くわからず、思わず間抜けな声が出た。

「だ、だって!ブレスレットくれたってコトは…!」

そこまで言って、オレの頭の上に浮かぶハテナに気づいたのか、言葉を切る。

ちょっとの沈黙。

次の瞬間には、頬がカァ、と色づくのを目撃するコトになる。

「名前?」
「なっ、なんでもないっ、なんでもないの!忘れて!」
「そんな顔されて忘れてって…。無理に決まってるじゃないッスか」

すっかり真っ赤に染まったその顔を隠す手を掴む。力で勝てる訳もなく。
少しだけ体を曲げて、視線を合わせた。

オレ、バカだから分かんないんス。だからさ、教えて?

それを伝えると、まだ恥ずかしいのか少し唸って、時間を空けて。

「こうやって、まぁるく人を包むものってね、」

えぇとそのぉ、と、小さく小さく口を開く。
きゅっ、と一度唇が結ばれたかと思うと、さっきまで揺れていた視線がばちり、と合った。

「その人のコトを、束縛、したいって意味…も、持ってる…の」

だからね、涼太くんが束縛してくれるなら私も束縛してもいいのかなって。
最後の方は、やはり恥ずかしいのか視線が逸らされて、声も小さくなって。
だけど、さっきのソクバクうんぬんの話はわかった。
ぴたりと固まって黙るオレに何を感じたのか、ごめんだとか、冗談だとか、取り繕うのに必死な彼女。
もちろん、プレゼントは彼女のコトを考えながら決めた。
プレゼントの意味まで知らなかった訳だけど。
これが似合う、よりもまず、これがいい、そう思ったのも事実。
なんだ、

「あ、安心していいよ!束縛なんてしな、」
「してよ」
「…え?」
「してよ、ソクバク」

こんなコトで気づくんだ。
無意識ってすげーなと関心しながら、逆に固まった名前を見つめる。
開けられた包装の中からブレスレットを取り出してその手首につける。

「名前にならソクバクされてもいいッス」

しっかりと金具が留まったコトを確認して、一撫で。
それに視線を落とした名前がへにゃりと笑うから、ちゃんとプレゼントの意味が伝わったんだなと嬉しくなった。


無計画に愛を呟く















ちゃんと意味を知っておきましょうかプレゼント。アクセサリ。

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