中学校一年生の時だった。
入学してすぐ。
同じ教室で、男女は違うものの同じ制服を着ているのにキラキラしたその人に、私はすっかり虜になってしまった。

たくさんの人の中心はいつも彼で、笑う姿に心底胸が高鳴った。
好きになってしまったのだ。
だけど、その気持ちを伝えるなんてコトはしなかった。
できなかったと言うと、適切ではない。
モデルというお仕事を学校の片手間にこなす彼はあまりにも遠い存在で、見ているだけである程度満たされてしまったのだ。

キラキラした彼に、私は惚れてしまった。
キラキラした、黄瀬くんに。






ようやく高校生になって、なぜ今こんなコトを思い出しているかというと。

「大丈夫ッスか?!」

その黄瀬くんが目の前にいて、私に声をかけているからだ。
先生に運んでおいてくれと言われたプリントを抱えて確認もせずに飛び出した曲がり角。
それはもう見事に向こう側から来た人とぶつかった。
反動で尻餅はつくし、抱えていたプリントはばらばらになるし。
何をやってるんだ、自分。と思いながらぶつかった相手にごめんなさいと言おうとした言葉は途中で消えた。
見上げた先にいたのが、黄瀬くんだったから。
語尾が消えていった私を不思議に思ったのか、こちらを覗きこんで来る。
ぐわっ、と全身熱くなって、変に心臓が鳴り出した。

「だ、大丈夫です…!」

顔が、真っ赤だろう。
見られたくなくて、床に散らばったプリントをかさかさと慌ただしく集める。
大丈夫ですから、ごめんなさい。を何回も繰り返しながら、黄瀬くんがその場から去ってくれるのをただひたすらに祈った。

それが、全く叶わないなんて。

よっこいしょ、なんて言いながらしゃがみ込むと、私の手の届かない場所のプリントを集め始める。
すぐにこの場から立ち去ってくれるものだと思っていたからか、ぎょっとしてまた大丈夫ですからと声を出した。

「遊んでたオレも悪いし」

手伝わせて欲しいッス、ね?
こちらに向けていたはずの背中に言ったはずが、黄瀬くんは体を捻ってこちらを向いて、ニッと笑った。
ぐっ、と胸が苦しくなる。

あぁ、私はこの人が好きなんだ。

この人のキラキラした笑顔が好きなんだ。
中学1年生の初めて黄瀬くんを見た日を思い出す。もう3年前だ。
中2でバスケを初めてから、黄瀬くんはもっともっとキラキラした。(一時それがなくなってしまった時があったけれど。)
私は、もっともっと黄瀬くんが好きになって。

思い出に浸りすぎたのか、おーい、と目の前で手を振られてようやく意識が戻った。

「はい。これで全部ッスかね」
「うん。…ありがとう、ございます」
「どういたしまして」

じゃあ!と今度こそ去っていく後ろ姿を見ながら、苦しくなった胸を抑えた。





いつだって好き















書きたいものがかけないその1

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