※ホワイトデー








丁度1ヶ月前。バレンタインと云うとんでもイベントが街中いたるところで行われていた。
立海も例外ではなく。その日一日、甘ったるい臭いに包まれたままげっそりしたのを覚えている。
特に同じクラスに甘い空気の中、さらに大量に甘いものを食べるヤツもいるし。見ていたこっちがお腹いっぱいになった。
これだけ文句をたらたら言いながら、残念ながら私も女子。
甘いものはあまり好きではないという彼のためにチョコレートを溶かした。



さて。世の中のしたたか女子が3倍ね、とにこやかに宣言した日、今日。
ホワイトデーと言うヤツです。
バレンタインデーよりも甘い匂いはしないし、そわそわしている男子も少ない。
げっそり気持ち悪くなるコトもなく、友チョコのお返しー、なんて貰えたクッキーを頬張った。





本日最後の授業の先生に捕まって荷物運びをさせられて、若干ぐったり。
帰りに仁王を呼んでこい、と命じられてぽーいと追い出された。

もう部活に行っちゃったかな。
教室にいてくれるとありがたい。
軽くなった体でふらふらと教室の引き戸を引く。ラッキー。

「仁王」
「おう、お疲れさん」

引き戸の先には、仁王がいた。
丁度荷物を片付けてこれから部活にいくようだ。すれ違いにならずに済んだ。
1つ手間が省けた。

「先生が呼んでたよ」

自分の机の横にかけてあった鞄を手にとって、荷物を片付け始める。
適当に教科書やペンケースを突っ込んでいく。
あーこの間小テストさぼったからかのぅ、と仁王の声。
馬鹿め。だからあれほどちゃんと出ろと言ったのに。
仕方ない、なんて仁王が言えた台詞ではない。

「早く終わらせて部活行けるといいね」
「ピヨ」

ふ、と上から影が降ってきた。
顔をあげると予想よりも大分近くに仁王の顔。

「に、」

ぎょっとしている間に、唇を塞がれた。
目を見開くコトで精一杯で他に力が入らなかったのか、薄く開いていた唇から口内になにかがコロンとやってくる。
もちろん口を塞いでいるのはこの男だから、こいつが寄越したもの。
すぐに唇は離れた。

ぽんぽん、と頭の上で手が跳ねた。

「先月のお返し」

べったらべったら、遠ざかっていく足音を聞き続ける。
さっきまでなかった口の中の何かが転がった。甘い。


あげるよ、














大遅刻

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