「(雨…)」

最近は天気が悪い日ばかりで困る。(梅雨だから仕方ないが)
そういえば、さっき見た天気予報のオネーサンも、「今日は一日降ったり止んだりな天気でしょう」とか朗らかに言っていた気がする。
どんより曇った空はなんとなくこれから晴れそうな気もするが、如何せん問題は今だ。
少しだけ憂鬱が増した腕で長傘を手に取った。

「(あ、鞄に折り畳み傘あるやん)」

玄関を出る前に聞こえたおかんの「あらさっきまで降ってなかったのにねぇ」は、もちろん天気予報で今日雨が降るのを前々知っていたから。特に朝のニュース番組で。
必然的にぼんやりとそれを見ていた俺も「今日は雨だ」という意識が強かったようだ。
鞄の脇に挿した折り畳み傘を慌てて鞄の中に放り込んだ。







「(雨…)」

今日は委員会の仕事でいつもより早く家を出た。
いつも通りに寝坊して、遅刻ぎりぎり。
朝御飯はしっかり食べたけれど、急ぎすぎて食べた気はしなかった。
いつも通りに慌てていたから、ニュースなんか気にしているはずもなく。
玄関を出る時に、今日雨やで!なんて言われた気がしたけど、案の定気のせいにして、長傘を忘れた。
幸い折り畳み傘がロッカーにあったはずだ。夕方までに止んでくれるコトを祈る。





「(神様のいけず)」

シトシトシトシト、
一日中雨だった。
結局朝の願いも空しく、雨は止まなかった。
ぼんやりと昇降口から外を見ていた。





「(あ、)」

苗字がおった。ぼんやり外を眺めている。
それをじっと後ろが見つめてやった。
傘を、忘れた、のだろうか。
どくん、と心臓が嬉しそうに跳ねた。
気のせいにしておく。





「苗字」
「財前くん」
「どないしてん」
「雨止まないなぁて、思って」

下駄箱から外履きを出す。
同じように隣で苗字が靴を出した。
先に靴を履き終えて、傘の準備OK。
苗字、なんて名前を呼ぼうとした。

「ほなな、財前くん」

ぱっ、とすれ違ったあとすぐに綺麗な色の傘が開いた。
もちろん、俺の傘ではない。
おう、なんて言ってしまったが、今いったい何が起こったのだろうか。
ばっ、と首を回して外を見やると、小さい傘が揺れていた。

なんやねんそれ。







「おい」

随分不機嫌そうな声だった。
反射的になんですか?と振り向くと、シトシトと髪と顔が濡れた。
は?

「なに?傘、返して」

折り畳み傘を財前くんにとられた。
雨を防ぐものがなく、あっという間に雨が降ってくる。
器用に長傘を持った手で私の折り畳み傘を畳んでいく。

「ちょっと、財前くん」
「ん」

それはまるで某アニメーション映画のワンシーンのようだった。
半分だけ濡れなくなった。
その代わりに財前くんが半分濡れた。

「帰るで」

一気に縮まった距離にどぎまぎしながら、財前くんを見た。

「なんで」
「…意味なきゃあかんのか」

少し遅れてやってきたその返事に軽く首を横に振った。




あめあめふれふれ












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