「にほんしゅ〜!おねーさあーん!にほんしゅ追加ッスー!」
「日本オワタ」
「あぁ」

へべれけに酔っぱらった黄瀬を見ながら青峰とこそこそ内緒話。
泣く子も黙る人気モデル様のこんな姿、ファンが見たら号泣するんじゃないだろうか。
成人して久しぶりに黄瀬と青峰と居酒屋で騒ぐ、キャンキャン鳴く黄瀬を弄って遊ぼうという企画趣旨だったはずなのに。

「青峰っちも、名前も俺だけハブで内緒話なんてズルイッス!仲間いれてよぉ!」

面白半分に、飲んだコトがないと言う日本酒を飲ませたのが間違いだった。
口には合った(それはなによりで。)ようだが、如何せん、

「(質、悪っ)」

絡み方がうざい。
ちろりと青峰に視線を送ると同じようにやってられんと首を竦められた。

「はい、日本酒」
「んん〜」

こんな大男を意識のない状態で運ぶのは絶対に無理(青峰ならいけるかも。)だと判断し、黄瀬には内緒で店員さんにお願いしていたお水を差し出す。

「浄水器の水は美味しくないッス」

キリッとモデルフェイスでそれだけ言うと、またふにゃふにゃと机に溶けていった。
心の中で思いっきり中指を立てる。ふぁっきゅー!
呼び出しボタンを連打しそうな黄瀬の手元から、イライラしながらボタンを遠ざける。
がたり、とおもむろに隣の人物が動いた。

「ちょ、青峰どこ行くの」
「便所」

パーテーションで小さな個室になった空間からいなくなろうとする青峰の服の裾を掴むが、無慈悲にもそれを払われて酔っ払いと二人きり。人でなし!
こっそりと私の隣に収まって、にょろにょろとボタンに伸びてきた手を叩き落としながらひとつため息を吐いた。

「もー酒ないッスよぉ〜」
「これ以上酔ってどうすんの」
「酔ってなんかないッスー」

酒ぇー!なんて騒ぐ黄瀬の頭を叩く。
酔っ払いの介抱など誰がするか!

「水にしときなよ」
「やーだー!美味しくないっすもん!」

駄々っ子のように首を振ると、ざまぁない。
酔いが回ったのか頭がふらふらと揺れた。
横に倒れそうになるもんだから思わず支える。
一般男子よりも大分大きい体を支えるには、必然的にその下に体を滑り込ませるしかない。
押し潰されそうな重さに耐えると、上から楽しそうな笑い声が降ってきた。
一緒に熱い吐息も。さ、酒くっさ…。
重い体がもぞもぞと動き、にゅっと腕が伸びてきた。

「黄瀬、苦し」
「んん〜」
「おい」

息苦しいくらいに抱き締められる。いや、呼吸困難に近い。
離せ離せと固い胸板を叩くが、反応なし。

「ちょ、いい加減に」
「美味しいのが、いいッスよ」
「は、」

ぶわりと広がる熱に目を大きく開いたまま固まった。
綺麗な、顔。

「…!」
「ごちそーさま」

あはー、なんてバカみたいに笑う男にキスされたらしい。

熱かった。いや、熱い。

火照る頬を隠すしか今はできない。
な、にそれ。

「いたっ!」
「バカ!バカ黄瀬!」
「いたっいたいっ!痛いッス!」
「なにすんだコノヤローっ!」

青峰が帰ってくるまで黄瀬を叩き続けた。
なにやってんだコイツらな目で見られた。黄瀬のせいだ。
なんもないッスよー!なんて、またべろべろな酔っぱらいに戻る一瞬前。

「可愛かったッスよ」

ふらついたフリをして耳元に寄った唇にまた顔が熱くなった。





酔っ払い















黄瀬くんにはまりました(瀕死)

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