嫌いになろう。

だって、仁王はいつだって私のそばにはいないから。
彼女ってなんだっけってね。思ってしまったんだ。

仁王を嫌いになろう。

今は無理でもすぐに、きっとすぐに仁王を嫌いになるコトができて、この人と別れたいと思えるはずだ。






「なぁに悩んどる」

ふと、頭の上から声が降ってきた。
どきり、心臓が大きく跳ねる。
着席しっぱなしだった私の目の前の席を引いて腰かけると、無遠慮に頬杖をつく。
頬杖をついて考え事をしていたがあまりにも距離が近くて恥ずかしくなった。
慌てて体を引こうとすると、頬杖を崩した左手を掴まれる。
キリキリ、心臓が、痛い。

「なんでも、ない」
「そんな顔されちゃあ心配するぜよ」

しばらくの沈黙。
じっ、と見つめられるのは久しぶりだと思った。
まぁなんもないならそれでいいがのぉ、それだけ言って頭をポンポンと軽く撫でられて仁王は去った。
ズキズキ、心臓が、潰れそう。
こっそり仁王の背中を見送るとすぐにそばに女の子がやってきた。

悔しい、悔しい、だけど嫌いになんてなれなくなってしまった。


ピンで留めた(仁王の策略だとは誰も知らない。)













- 40 -


[*前] | [次#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -