七夕は日曜日だった。
大会前だから当たり前に練習で、気づいたら周りは暗かった。
会いたいなりー、なんて猫なで声で呼び出した名前の携帯にもう一度電話をかける。
いつもより少し長めにコール音。

『仁王?』
「うん。今どこ?」
『ん、すぐ着けるよ』

すん、と鼻を効かせるみたいに空気を取り込んだ。暑い。
今すぐクーラーの効いた冷たい空気を取り込みたい。
名前がきたら、一緒にコンビニでアイスを買おう。

そうしよう、とぐるん、と首を回す。
コンビニの入り口の横にカサカサと音をたてる笹。
あ、そうだ、

「七夕じゃ」

さっきまで覚えていたのにすっかり忘れていた。
ふと、空を見上げる。
雲が千切れ千切れにほんの少し、浮いているだけだった。
去年までの七夕はどんより曇りのイメージしかない。
厚ぼったい雲の上で彦星と織姫が何をしているのか気になって見上げた記憶が新しい。(そのあと、姉貴にバカかと頭を叩かれた。)

「今年はよく見えるかのぅ」
『ん、』

ふと、空を見上げた。
そうか、ここは神奈川だった。
一等星しかチカリと見えない空に聞こえないように嘆息。
ミルキーウェイ枯れたか。ヒートアイランド現象により消滅とでも見出しをつけよう。

『一年に一度しか会えないなんて寂しいじゃない』

会えたかな会えないかななんて考えていた。
スピーカーの向こう。

『天の川が枯れたらそこは、砂漠になるのかな』

船がなくても、橋がなくても、歩いていけるんなら、私は幸せかな。

道の遠くの方に名前が見えた。











すでに10日になりました。申し訳ないです。


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