じっ、と後ろから見つめた。
何をって?

「なんやねん」
「べつに」

侑士を。
もっと言えば、手を見ていた。
最近は暑くなったし、寒いねなんて手を繋ぐコトができなくなった。
もきゅもきゅとなにもない手を動かす。

もきゅもきゅもきゅもきゅ、

前を歩く侑士には見えていない。
ラケバ、ずるい。そこ替われ。
だんだんと、侑士の腕に絡み付いてるように見えてきたラケバには睨みをきかせる。

私のです、私の彼氏です。
ぎりぎりぎりぎり、

ぶらぶら揺れるその指先を見ていた。
豆がね、あるんだよ。
他の子は知らない、知っているわけがない。
みんなに負けないくらい練習してるのよ。ふふん。
なんの優越感なのか、少し嬉しくなったけれど、残念ながらラケバが目に入る。
ずるいずるい!

「なんやねん、もう」
「なんでもないもん」

素敵。思いが届いたのかしら。
なんてちょっとメルヘン。
ただただ無言なのが珍しいなんて思ってる訳じゃないと信じているよ。

「なんでも、ないもん」
「ふぅん」

くるりと向けられる背中に今度こそ殺意を当てた。
やだ、恥ずかしいんだから言わせないでよ。バカバカ、バカ。
天才なんて嘘っぱちじゃないか。

「ん、」

目の前に手のひら。

「え、」
「手」

突然の出来事にぽかんと口をあけるしかなかった。

「繋ぎましょーか?」

どっくん、なんて心臓に身体中の血を一気にとられたみたいに、身体中がびりびりした。
頷くのが精一杯だったけれど、縦に必死で首を振った。


フェミニストの策略








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