「凝ってる?」
「凝ってる凝ってる」
光に肩を揉んでもらう。
なんて、なんて贅沢なんだろうか。
部屋着に着替えてベッドに倒れていれば、窓から入ってきた光に踏まれた。(「むぎゃっ」「あ、堪忍」)
そんなに重くなく、しかもいい感じに疲れているところだったからか、痛いよりも、気持ちいいと感じてしまったのだ。
思わず「もっと」と言った時の、ドン引きした光の顔は忘れない。(「疲れとるんやったら肩揉んでやるから、変な趣味走んなや…」)
まるで哀れなものを見る目だった。
断じてそんな趣味はない。
「はー、気持ちいい」
「そりゃようござんして」
痛いくらいに固くなっていたのか、だんだんと肩の筋肉がほぐされてぬくくなっていく。
気持ちがいいから目を閉じる。
ふ、と目元がぬくくなった。
慌てて目を開けようとすると、眉間をぐりぐり。
「ちょ、光」
「開けんな」
ぐりぐりとやっていた指が目頭をきゅっ、と摘まんだ。
さすられるみたいにマッサージ。
「怖い顔したらあかん」
ちゃあんと明日からは笑わなあかん。
ぬくぬくのその指が目頭を押すからだよ。
だばっ、と涙が出た。
ホグシマショウカネ(俺にしときゃいいのに、とは言わないズルさ。)
裏設定は、社会人ヒロイン。
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