※メンタル弱すぎる仁王






「におークン」


屋上までの階段が息を切れさせる。
仁王を迎えに行けと命じられてまずここに来るのは正解だと思っている。
基本的に仁王はいつだって屋上の柵のところにいるのだ。
先生も一般生徒も知らない。
上手く隠れた窓から出入りするからか、いくら勘のいい中年太りなおっさん先生にもバレない。
ようは、ある程度の隙間に入り込めないと屋上に来れないのだ。
ガリガリだからね、君は余裕だね仁王。
柵の前で体育座りなんてする同い年の隣に同じように体育座りした。
あ、ここのコンクリ汚い。


「戻っておいでよ、におークン」

「…」

「丸井だって切原くんだって心配してる」

「…」

「勘違いなんだから、この授業終わる時に教室戻ろう」

「…、嘘じゃなか?」

「ん?」


膝を抱えこんだ腕。
顔をそこに押し付けているからか、仁王の声は聞き取りにくい。
もう一度聞き直して、あまりにも下らない言葉に深く溜め息を吐いた。
友情トラブルってヤツですよ。全く困ったもんだ。


「…」

「ねぇ仁王。今何考えてんの」

「…なんも」

「嘘だね。丸井も切原くんも、今は授業受けてるよ」


どっかの誰かさんと違ってね。
微動だにしない仁王にとりあえず棘を投げておいてやる。
私だって授業受けてたい ですよ、えぇ。
先生とか幸村くんとか柳生くんとかに頼まれなければ。
いや、これは嘘かな。
きっと頼まれなくても来てた気がする。


「…女々しいヤツ」

「…」

「…」

「…、」


もそもそと膝を小さく小さく抱えていた片腕が解かれた。
制服の皺の跡がくっきり付いた指。

ぴん、


「俺が遅刻していったから、いるのに気づかなかった」


ぴん、

指は「2」を示した。


「この間俺が2人に悪戯したからわざとそうした」


3、


「実は丸井と赤也は俺のコトが大嫌いで、だけど部活が一緒だから仲良く振る舞ってくれてるだけで、日常生活でも一緒とかマジねぇわって思われてて、同じクラスになったコトも嫌がられてて、忘れ物とか取りに行ってる間に愚痴とか言われてて、この世からいなくなれって思われてるか」


どれか。
どこで呼吸をしているのかも分からない3番目に気付かれないように溜め息をもう1つ。


「仁王は、どれだと思うの」

「…」


途端に喋らなくなった仁王の三本立てられた指をなんとなしに握り込んでみるとあっという間に掌で捕まえられた。


「一番、目」

「そう」


にぎにぎ、
私の指は握力マシーンじゃないんだけどね。
やたら冷たいし、手汗をかいている手だった。しょうがないヤツ。
いつまでも仁王の腕の高さに合わせてやっているのも疲れるからコンクリの上にその手を、握っている仁王の手ごとコンクリにゆっくり落とした。
空いている片手は背中に当てて、さすってやる。


「怖いんじゃ」

「うん」

「嫌わてたらどうしたらいい、気づかなかった自分の馬鹿さ加減に気づいた時はどうしたらいい、もし独りぼっちになったらどうしたらいい、」


相変わらず聞こえにくい声だった。


「そうだね、」


背中をさすってやっていた手を一回離して、制服のポケットにいれてきた仁王の携帯を持ち主に渡した。
チカチカとメール着信のランプがずっと光っていたのに、コイツはネガティヴにセンチメンタルに屋上にエスケープ。
かちり、と携帯の首がはまった。


「少なくとも私が来ちゃう限り仁王は独りぼっちにはなれないね、」


上げられた顔はもう締まりなくでれっと泣きそうなまんま笑った。



面倒臭いヤツ











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