最低な夢見だった。
「どうしたの、げっそりして」
最低な夢を見たんだ、
そういえば幸村は机に突っ伏す私の目の前の席を引いて座った。
へぇ、そうなんだ。その夢の話聞かせてよ。
にこにこして楽しそうな幸村に聞かせるのはなんとなく癪だったけれど、こんな胸焼けしそうに悪い夢はきっと誰かに共有して笑って貰えれば変わって見えるだろう。
バクに食べてもらう以外に。
「たくさんのね、」
たくさんのユリの花の中で棺に入る夢を見たんだ。
言葉に出すとまた気味が悪かった。
薄暗いのに、真っ白なユリの花がこっちを向いて早く棺に入りなさい、なんて言っているみたいだった。
一人な訳がなかったのに、独りぼっちの寂しさから思わずユリの群生の中で泣いたんだ。
「それはなんとも物騒な夢だね」
幸村が私の見た夢をちゃんと聞いてくれたコトはとても嬉しいけれど、物騒とは一体。
ふわり、幸村からユリの甘い香りがした。
「今丁度、温室でユリを育てているんだ」
そういえば、ガーデニングが好き立ったっけ。
きっと、そういう人に育てられたユリはあの夢と違って、怖くなんか見えないんだろうな。
「もしよかったら、温室に来てみるかい?」
「いいの?」
「もちろん」
ふふふ、と綺麗に幸村が笑う。
ふふふ、と綺麗に幸村が笑った。
世界で一番綺麗な死に方
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