息がつまる、酸素が足りない。苦しさから目を醒ました。
「っん、ふ、っぅ…」
部屋は真っ暗だったけれど、はっきりと、今私の上に誰が覆い被さっているかは分かった。
窓からの光を背中に浴びて、銀色の縁取りができている。
綺麗だ、と思う前に死にそうなキスを止めてもらうのが先。
起きたコトを知らせようと体を捩る。
手はしっかり押さえつけられていて動かなかった。
息がつまる、酸素が足りないキス。
ねちっこいそれに頭は酸欠で限界。
嗚呼死ぬのかも、と思った瞬間、あまり綺麗とは言えない糸を繋いで雅治は離れた。
酸素を取り込む。肺が泣きそうだった。
上から降ってきた雅治がまた肺を圧迫する。肺が、
「なにするの」
「…」
「雅治」
ようやく整った呼吸を吐き出す。
ぐりぐりと首もとに擦りよってこられても残念ながら通じない。
「雅治」
「…」
「ねぇ、雅治」
「…」
細い髪がこそばゆかった。
ぐーっと首を逸らそうとすれば、抱き締められるように拘束。なすがまま。
「…怖かったんじゃ」
「え?」
何分経ったか分からない。
反応がないから、呼び掛けるのも止めてただただ微妙に凹凸のついた天井を眺めていた。
深呼吸したり、息を止めてみたりしていた雅治がボソリと呟く。
「名前が俺を嫌いになったらどうすりゃいいんじゃ」
時計が目に入った。
ベッドに入ってからもう何時間か経っていた。
髪はとっくに乾いているのに、肩口が濡れているのは雅治の髪がまだ濡れていたからかと思ったけれど。
「嫌われとう、ない…っ」
そうか、泣いているのか。
グズグスとしゃくりあげるように泣きながらすがり付いてくる雅治の背中を撫でる。
「どうしたの」
「夢が、夢で…」
独りぼっちは嫌いだ。
そういって雅治はまた泣いた。
泣き声を聞きながら思う。
こうやって雅治を慰めている間に私の睡眠時間は少しずつ少しずつ削られていく。
雅治は寂しいと泣く。
「嫌いに、ならんで…っ、俺を嫌いにならんで…っ」
これだから悲しい夢は嫌いだ。
考えたくない不安は雅治と一緒だと、早く気づけばいいのに。
泣き虫うさぎは夢を見る
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