「眼鏡、外すの…?」

不思議そうに、少し怯えたようにそう問いかける名前を見て、少しイタズラ心が沸いた。
ただ眼鏡を拭こうと思っただけやけど、なんて本当のコトは言ってやらない。
間にあるテーブルに眼鏡をゆっくり置いて、向こう側に座る名前の頬を撫でた。

「キス?」

ぎゅうっ、と目を瞑ってそれを受け入れる彼女を見ながら想像していたであろう言葉を口にする。
するすると撫でていた頬が瞬間熱を帯びる、真っ赤。
耳までゆで上がったみたいに赤。撫でるのを止めて掌を頬に添えた。
立ち上がって、体を名前の方に寄せる。
ゆるゆると開けられた瞼の奥から、恥ずかしげにこちらを睨んでくるけれど、恐い訳がない。

「期待しとるんやろ?」

口の端だけで笑ってやると、照れくさいのか、それが悔しいのか、眉間に皺が寄った。
ゆっくりゆっくりその距離を詰めてい、

「っ?!」

頬に添えていた手を引かれたかと思うと、一期に距離はなくなって、しっかりと唇がくっついていた。
いつもよりほんの少しだけ長いキス。
俺がしたんじゃない、

「キス、期待してたんでしょ?」

名前が俺にキスをした。
してやったりな顔で喜ぶ。
そんなコト滅多にされないのに。
得意気なその顔を見て、改めて嵌められたなんて気付く。

「策士やんなぁ…」
「あら、お褒めの言葉をありがとう?」

あんなコトされて、黙ってられる訳もなく。
今度は一気に後頭部に手を回してそのまま俺からキスをした。
真ん丸に見開かれた目を見て、さっき返された台詞をまた返してやる。

期待してたんやろ?

真っ赤な耳も、頬も熱かった。
眼鏡はまだかけられそうにない。


期待してるのはどっちだ





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