エイプリルフール。
テニス部はなんだかざわめきたって落ち着きがなかったが、俺は俺でそわそわしてたまらなかった。
今年はどんなペテンを仕掛けようか。ホクホクする。
ブン太と赤也は何故だか俺を見るなり逃げたしたけれど、あとでひっ捕まえてもれなく遊んでやるぜよ。

楽しい楽しいエイプリルフール。
授業がないのは残念だが、的を絞ってペテンペテン。
頭の中でたくさんのシミュレーションをしていると、

「珍しいのぅ」
「仁王」

クラスメイトだった名前が目の前からやってきた。
文化部の幽霊部員だというから今日なんて学校にすら来ないヤツの一人だと思っていた。

そうだ丁度いい。
今考えていたペテンでエイプリルフールを飾ろう!
ニタァ、と笑いそうになるのを必死で我慢。

「部活か?」
「ううん、提出物出すの忘れちゃってて」
「職員室か?」
「うん」
「ほう。じゃあ俺も一緒に行く」

シミュレーション通りに進む会話に内心ほくそ笑む。
名前なら騙しても問題はない。
優しいから、怒りながら許してくれる。いいヤツじゃ。
心の中でホコホコニマニマ。


「こぉら仁王、またペテンにかけようとしてるな」


ぺちん、と名前の掌が額に押し付けられた。
予期しない行動に頭がぐいん、と仰け反る。
え、

「な、んで?」
「口の端がヒクッてした」

仁王が嘘吐くときは大体そうだ。

「嘘は泥棒の始まりなんだぞ」

それだけ言うとプリプリ怒ったみたいに先に歩き出す。
鳩が豆鉄砲食らったような。くるっぽー。
まさかの展開に呆然と立ち尽くすしかなかったけれど、ふと状況に頭が追い付いた時、顔に一気に熱が溜まった。

なにあれ、ズルイ。

シミュレーションがぶっ飛ぶくらいに心臓がきゅんとした。
我に返る。

「俺も一緒に行くっていったじゃろ、待ちんしゃいよぅ!」

慌てて名前の背中を追いかけた。


詐欺の日








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