急いでいた。
残念ながらとってもとっても急いでいた!だってこれ遅刻!
もれなく先生のお説教とクラスメイトの冷たい目線をいただけるプレゼントつき、嬉しくない。
ひぃひぃ言いながら自己ベストを記録し続ける私すごい。
絶対に!間に!合わない!
腕時計はどう見たって2時間目30分前。
つけ間違えてはいないんだこれが!

どーん!

思いっきり何かにぶつかった。
前方不注意。
思わず相手の腕を掴んで引っ張ってしまった、やっちまった!
ぶつかった相手の腕をこれでもかと引っ張ってなんとか地べたに着けないように引っ張りあげた。

「ご、ごめんなさい!」
「…」

人にぶつかってしまったのと、時間が気になるのとで心臓に微細動でも起きているんじゃないかと心配になった。

「あの、大丈夫ですか?」
「…」
「あ、の!」

なにも言わないその人を見るべく下げていた頭を上げて、

「だから、その…、すみませんでした!」

もう1回下げた。
さっきまでのドキドキとは明らかに違うこれは、先生に怒られるだの、友達に呆れられるだの、そんなレベルじゃあなかった。
これはまさに、

「(死亡フラグ!)」

なんて綺麗な銀髪だったのかしらー、なんて優雅に秒単位で頭を下げた。
しにたくないしにたくないしにたくない!
何も言わない不良さん(仮にそう呼ぶコトにした。)に少しだけ顔を上げてすぐに下げた。
ずずずっ、と目だけ不良さんの顔を見て、ぱっと頭ごと下げた。
絶対に!怒ってる!
泣き出しそうなのを必死にこらえる。

「ほ、」
「ほ…?」
「ほれた」
「…は」

ほ れ た ?
思わず顔を上げて不良さんを見つめると、その顔は一瞬で、じわっと赤くなった。
ぱっと手を取られて逃げるに逃げられなくなってしまった。
なんだこれは。

「かっこえぇ」
「は、い?」
「お前さん、名前は」
「苗字名前、ですけど…」
「名前ちゃん、」

「俺をお婿にもらってくんしゃい」

ダメだこいつ。
頭がそれを勝手に判断してくれたおかげで、無意識下で不良さんに蹴りを入れるコトに成功した。


初めまして。(「名前ちゃーん!」「ついて来ないでください!」)











申し訳ない限りです気持ちでいっぱいです。


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