今日は双子座流星群が綺麗に見えるでしょう。
なんて天気予報のおねーさんが言うもんだから、なんだか見ないと勿体ない気になって、寒がりの癖にベランダに出た。
家族全員寒いから嫌だと言ったし、俺自身も実はちょっと止めようかと思ったけれど。
学校のヤツらの盛り上がりとかなんやらに押されて、結局ベランダでマフラーに顔を埋める羽目になっている。
流れ星見えないし。
はふ、と息を吐き出すと白くふわぁと靄がかる。
こんなに寒いのか。
改めて気づくと体がガタついているような錯覚に陥る。
あー寒い。
そろそろ部屋に入ろうか。
なんて考えていたら、携帯が鳴った。
「仁王ー?」
「ぴよっ」
ひとつ鳴くとまた息がほわぁと出た。
こりゃ寒いって。
だのに部屋に入らないのは電話が掛かってきたから。
マイペースめ、なんて心の中で悪態を吐きながら情けない声が出ないように唇を軽く噛んだ。
「仁王、どこいる?」
「家」
「今日は双子座流星群だよ」
「知っとる」
やけに楽しそうなのはそれが原因か。
頬に当たった指が冷たい。
「流れ星、見えた?」
「見えん」
「私もね、見えないんだ」
はふ、ともう一度白い息を吐く。
使っている左手の感覚はもうない。
右手をもっともっとポケットの奥に捩じ込む。
「流れ星が流れたら、なんてお願いする?」
「さぁ、決めとらんのぅ」
願掛けなんて忘れるに等しいくらいの記憶だった。
そうだなぁ、どうしようか、何を願おうか。
「名前はどうするんじゃ」
「私?そうだなぁ、」
へらへら笑いが耳をくすぐる。ぱっとロマンチックな願いが浮かぶ。
はははっ、さすがにこれは、
「仁王とずーっと一緒にいれますように」
なーんてね!
なんて向こう側でいう直前に同じような願いを頭に浮かべて、声に出さずに口だけ動かしていた。
あ、流れ星。
なんて声に出す口の形をしていなかったから言うのを止めた。
3つ同じ願いが重なったら、叶えてくれますか、お星様。
お星様にお願いしようか。
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