「いややっ、ひーくん返してっ!」
「おっこってたから俺のやもん」
「ちゃうもん、かえしてよー!」
「わっ!なにすんねん!」
「ひっぱらんといてよ!壊れてまうやろ!」
「…!」



小さい頃からツンケンしてて、意地悪で、口が悪いのが光だった。
買ってもらったばっかりのオモチャやら人形やらは次の日にはいっつも光のオモチャ箱から発見されて。
返してよ、なんて毎日のように言ったし、よく取り合いもした。
でも、光と引っ張りあいをしても壊れたオモチャは一個もなかった。

実はな、ひーくんめっちゃやさしいねん!
そう光の兄ちゃんに語った時に教えてもらった理由の可愛さは今でも私の、私の、

「何笑っとんねん」
「可愛い可愛いひーくんで思い出し笑い」
「しばくぞ」
「ゴメンナサイ」

ドツボです。
ひぃひぃ言いながら笑っているとぎろりと蛇もびっくりな眼孔で睨まれた。蛙!
兄ちゃんは笑って教えてくれた。

「くるみ割り人形って知っとるか?壊れたお人形がイケメンの王子様で、女の子は王子様に恋してしまうんよ」

光は名前ちゃんを王子様に取られたないんやろなぁ。

「やってなぁ、光がそないメルヘンな訳ないって思っててんもん」
「うっさい黙れ」

へらへらと思い出し笑いを繰り返していると思いっきり頭を小突かれた。痛い!



王子様、こっちくんな。
(「あう!壊れてまうやろ!」「ふん、オモチャやあるまいし」「壊れたらどうしてくれるん!」「責任とったるで」「…え」)









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