(主従同世代+俺様溺愛×おバカ従者の攻視点)宝条三景


宝条家と支江家の関係は主従関係だ。
それは先祖代々変わる事の無い関係であり、男女関係なく宝条家の者には必ず支江家の従者が付く。

だが、次期社長の長男に付く従者は支江家が完璧に育て上げた最高の従者が付き、次男には次位の従者が付く。宝条家の者が女なら支江家の従者が従者婿となる場合もある。

長男、長女、そして俺。三男以降にも一応長男の従業員となり支店長となるが自由度が違う。長男長女より完璧に育てなくても良い。だから当てられる従者も完璧でなくてもよい。

「わー!カッコイイですね!あ、僕は支江正志(しえまさし)と申します。宝条様と同じ年です。死ぬまで宜しくお願いします」

三男の俺には支江家の落ちこぼれが付いたらしい。宝条家と支江家の両家がこそこそ話したり言い争ってる所人達がいたから聞こえた。
そして長男から宝条家初の同い年主従と言われた。
つまり、俺も期待されてないって事だ。
長男長女と比べ俺は落ちこぼれと言われて育ってきたのもある。

そんな俺にも主従が付いたし、その従者がフワフワと微笑みながら俺をカッコイイと言い死ぬまで宜しくお願いしますと言ったんだ。
死ぬまで俺に仕えてくれる存在が。

俺は嬉しくて直ぐに指輪を渡した。
受け取った正志は指にはめ、正式に俺の従者となった。それが8歳の頃の話だ。

落ちこぼれ同士の主従関係。
正志が頭があまり良くなくて耳が少し聴こえにくくても俺は正志を可愛がったし俺が勉強や運動や美意識を頑張れば周りからの評価は変わり、正志も周りからの印象が変わっていった。頑張ってる間は色々とあったが正志を愛でて愛でて愛でまくっていた。

が、成長期に入ると俺はモテてしまった。
美意識を磨いたことが有るが、まさかモテるようになるなんて思わなかった。
そのせいで中等部と高等部では強制的に生徒会役員にされ、抱かれたいランキング1位なんて相手が正志以外興味無いし論外なのに1位になった。全然嬉しくなかったのだが、

「宝条様1位です!すごいです!皆さん解っているのですね!宝条様に抱きしめて貰ったら心が落ち着いて幸せに満たされるのだと!」

と、微笑みながら正志に言われたから抱きしめた。

「わー!宝条様!幸せパワーが漲ります!」
「俺もお前から幸せパワーを貰ってるぞ」
「そんな僕からなんて……あ!僕のハンカチ!昨日から見当たらなくて探してました!落し物箱に入っていて良かったです!」
「……そうか、よかったな」
「はい、幸せパワーが発揮された成果ですね!」

……と、まぁ、少しムードクラッシャーなところもあるが俺は好きだ。

だが、ランキング表の前で正志を抱きしめたって事は大勢の生徒に見られたわけで、まだ非公式だった親衛隊に嫉妬の炎が燃え上がり正志に矛先が向かう事件も起きた。
が、俺に従順素直な正志は非公式の親衛隊に言われた内容と暴力を泣きながら話した。

対策に俺は非公式を認める事にした。
だが、親衛隊長は正志にして副隊長が隊員を仕切る形に。正志に制裁した奴らは除名。俺のルールを守れない奴、正志に制裁強姦を企む輩も即除名すると決めた。

決めたが、正志に制裁しようとする輩は消えない。
けれど何時からだろうか、正志の少し聴こえにくい耳が役に立つ日が来たのは。

「は?比叡山延暦寺?近くねぇよ」

制裁犯の早口言葉が聞き取れなかったようだ。
今回も呼び出しで聞き取れた言葉から連想して制裁中でも電話を俺にかけて話してくる。
(嘘っ!宝条様に電話?!)
(まじかよっ、ちょっ、切れ!)
聞こえてるぞ制裁犯。
電話が切れてまた電話が着たかと思えば。

「……また釣りか」
(流行ってますね船釣り!)

不釣り合いを船釣りと聞き間違えてるな、何度目だ……

何度も言うもんだから本当に船釣りに行くようになって楽しい趣味となった。親衛隊のメンバーや正志の制裁のつもりが船釣り参加になってしまった奴も釣りをしていればいつの間にか仲良く話せるようになっていたりする。

残念なのは正志が船酔いして連れて来れないのと魚が苦手で俺が釣った魚を食べてもらえない事だな。初めて釣った魚を無理して食べてる姿を見ていて切なくなった。正志は素直で顔に出やすいから口で美味しいと言っても顔は不味いと言っていたからな。だから釣った魚をリリースして釣った魚ではなく地元の土産を買って帰る。

「わー!僕の好きなピヨピヨ饅頭!」
「晩御飯の後でな。先にシャワー浴びてくる」
「そんなっ、宝条様、焦らしですか!1人ピヨピヨ饅頭耐久レースなんて嫌です!」
「じゃあ、一つだけな」
「ありがとうございます!」
「俺のバスローブと晩飯の用意忘れるなよ」
「は、はい!」

超笑顔でピヨピヨ饅頭を抱えてスキップしながらバスローブを取りに行く正志……うん、可愛い。相変わらず可愛い。襲いたい。だが自分の潮と魚の生臭い匂いを取らねば。

シャワーを済ませテーブルには晩飯。
俺が座る前に椅子を引く正志。一応ちゃんと従者の仕事をしている。座れば布巾を巻かれグラスに水が汲まれる。そして丁寧にメニューの説明をするのだが。

「……可愛いな」
「質問ですか?」
「いや、何でもない。続けろ」
「はい」

頭にピヨピヨ饅頭を乗せてるなんて可愛いだろ!
落とさないのは姿勢がいい証だ、うん、可愛い。写真撮ってポスターにしたいくらい可愛い寧ろその頭の饅頭ごと正志を食べたい。おっと、本能の本音が出てしまった。自重だ。自重。

飯を食い終わったら俺の目の前にピヨピヨ饅頭。

「食べずに置いていたんです。1人で食べるより宝条様と食べたいと思って、ダメですか?」
「いいや。一緒に食べよう」
「ありがとうございます……んまぁい!おいふう!」

ふんわり柔らかに美味しく微笑む正志は最高だ。
ピヨピヨ饅頭を1箱ではなく段ボール単位で与えたい。
ピヨピヨ饅頭まみれの正志を食べたい。
おっとまた俺の本能が。

「ご馳走様でした」
「もう1個食べないのか?」
「前回すぐに無くなって悲しくなったので1日1つと決めました!少し長く堪能できます!」
「よし!今からネットでピヨピヨ饅頭を段ボール買いする!好きなだけ食べろ!飽きるほど食べろ!乏しい思いなどさせん!」
「えっ!宝条様ダメです!そんな無駄使いはダメです!飽きたくないです!宝条様と食べて幸せ2倍なので大丈夫です!」

俺と食べて幸せ2倍……嬉しいがいいのか?!
俺が正志を満たせなくてどうする?!

「それに、このピヨピヨ饅頭は特別です。宝条様が釣りに行って寂しいと思っても、このピヨピヨ饅頭をお土産に帰ってきて下さると思うと嬉しくて待っているのが苦ではありません。だからピヨピヨ饅頭は宝条様が買ってきて下さる1箱で十分なのです」

そこまで言われたら、俺は、

「今度からはピヨピヨ饅頭1箱ではなく段ボール買いして帰ってくるから楽しみにしていろ」
「宝条様!1箱でいいのです!段ボールではなく1箱でお願いします!」
「……俺と食べるから2箱な」
「はい!2箱お願いします」

正志に弱いな俺は。
笑顔が見たくて嫌な思いをさせたくない。
好きだから仕方がない。
何度も正志と言うほど好きだ。

「正志、俺とピヨピヨ饅頭どっちが好きなんだ?」
「……比べるまでもないです。僕は宝条三景(みかげ)様にしか仕えない。三景様を一等に行動していますから」

正志は膝を付き、俺の手の甲に口付けた。

−終わり−


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