(腐男子先輩×クール?後輩)峯先輩
散歩同好会に向かう途中、俺は見てしまった。
「神谷、付き合ってくれ」
後輩の神谷君が告白されてる場面に!
ふぉぉお!俺の身近な後輩の神谷君が!壁ドンされて!告白!されてる!興奮が!ドキドキする!
「……どちら様で?」
「え゛」
「僕は貴方の事知りません。だから付き合えません」
「いや、俺、お前と同じクラスの朽木なんだけど」
「同じクラスでしたか。すいません。興味ありませんのでさよなら」
……神谷君、凄くドライ。俺が言うのもなんだけど朽木君が可哀想と思えるほど淡々として一刀両断かつ鉄壁。俺といる時より氷みたいに冷たい顔だった。
「待てよ!」
おっ!神谷君がすり抜けたのに朽木君が手首を掴んで止めた!粘るか!粘るのか朽木君!
「なに」
「知らないなら、今からでもいい!俺を知ってくれ!」
「お断りします。それに、僕は好きな人がいるので諦めて下さい」
終わったー!朽木君の粘りは虚しく終わったー!
それと神谷君に好きな人がいんだねー!
新情報!誰なんだ?誰なんだろ?!
「じゃあ、そいつに失恋したら俺を知ってくれるか」
「……」
「俺を、見て欲しい」
おぉ!朽木粘る!まだ粘っていた!素晴らしい粘り攻めだ!神谷君の腕を力強く握ってるね!神谷君の腕の血の気悪いよ!緩ませないとヤバイよ!
「興味ありません。ごめんなさい。これ以上しつこいと退学させますよ」
「退学?」
「僕、理事長の親戚で可愛がられてますので」
怖っ!権力怖いよ!流石に朽木君は手を離して謝りながら腰を90度曲げて去っていったよ!
神谷君って理事長と親戚だったんだ!
え、まさかお相手は理事長?理事長×神谷君なの?!神谷君×理事長?!どっち?!
「本当、覗き見は悪趣味ですよ。峯(みね)先輩」
「ほもぉ?!バレてたの?!」
「待てって止められなければ先輩の元に行こうとしてましたから」
「あははは…理事長×神谷君?まだ神谷君の片思い?神谷君→理事長?」
「理事長と親戚なわけないじゃないですか。それと相手は理事長じゃありません」
嘘?!また嘘なの?!それに相手は理事長じゃなかったら誰なの?!
「で。僕が告白されてる現場を見てどう思いましたか?」
「ほもぉ!ほもぉ!」
「……人間語で話して下さい」
「粘り攻め×ツンドラ受!良いと思いました!」
「そうですか」
……あれ?神谷君、怒ってる?いつもなら呆れてる顔をするんだけどな?
それに、何も言わずに俺の前を黙って歩くなんて変だ。
何時もなら俺をおちょくりながら歩くのに。
何も話さずに神谷君の後ろを歩いて時々顔を覗き込めば今度は思い詰めたような顔をしていた。
「神谷君、告白を断ったのを後悔してるの?」
「はぁ?」
「ごめんなさい黙ります」
違うんだ。じゃあなんでそんな顔をしてるんだろう。ホモォに敏感な俺には知られたくないとか?ホモォな事案は随時教えて頂きたいんだけど、無理かな?ホモォな相談も受けたい。ホモォほすぃ。
「……僕は…………」
「へ?なんて言ったの神谷君?」
「何でもないです。すいません、今日は帰ります」
「あ、うん」
神谷君は時々小さい声で呟く。
俺はそれを聞き取れない。聞き取れないくらい小さな声。意図的なのか、無意識なのか……。
「あ!神谷君が帰るって事はホモ見放題探し放題?!ヤッホーイ!」
何時もなら神谷君に邪魔されて最後まで見れないからね!神谷君が居ない今日は隅々まで探して見つけたら最後まで追える!
「待ってろよ俺のホモォー!」
テンションハイで散歩同好会開始!
歩くぞー!
.
.
.
いざ、ホモウォッチしてみるものの……神谷君が来ないとわかっていても来るんじゃないかと思う。
それに、神谷君が隣にいない事に違和感があって、少し寂しいとも思う。
何時もなら興奮してホモホモ鳴けるのに、おかしいね。
「……神谷君」
小声で呟くと脳裏に思い詰めた顔や怒った顔が過ぎる。クールでツンドラで俺を呆れ見下し表情が余り動かない神谷君の変化。
見るなら、笑った顔が良かったな、なんて。
そう思うと足はホモウォッチを止めて構内のパン屋に向かっていた。
.
.
.
「かーみや君!一緒に食べよ!」
「……先輩、どうして来たんですか」
「神谷君と食べたいと思ったから!」
「はぁ。あがって下さい」
パン屋で沢山パンを買って神谷君の部屋に突撃したよ!
もう怒ってないみたいだけど、まだ雰囲気が暗かった。
「ねーねー、どのパンが好き?俺は焼きそばパン!」
「はい、お茶どうぞ」
「ありがとう!で、どのパンが好き?神谷君も焼きそばパン?」
「…………僕は、…………です」
「え?なんて?」
聞こえなかったから耳を近づけると「近い」って引かれた。小声な神谷君が悪いのに!ぷんぷん!でも、頬が赤いような?
「く、クリームパンです!」
「!」
「僕は、クリームが好きなんです。頂きますよ」
「どうぞどうぞー!クリームパンかぁ。可愛いねぇ」
「殴りますよ」
「えっなんで?!あ、でも、クリームパンは俺も好きだよ美味しいね」
いつもみたいにジトっと睨む神谷君だけど頬が赤いせいか全然怖くない。
寧ろ、本当に可愛く見える。
「……半分こ、しましょうか」
「うん!」
珍しく神谷君がデレたよ!
レアだよ!レア!
レアはレアでも怒ったり悲しい顔のレアよりこの可愛らしいデレのレアがいいね。
「神谷君、おいしいね!」
「……はい」
ほら、可愛い。でも、こんなに可愛いって思ったのは初めてかも。可愛いと言ったら攻めがよく受けを可愛いって言うよね。こんな感覚なのかな?
「俺、神谷君だったら攻めれるかも」
「は?また僕で妄想ですか?やめてくださいよ」
「うん、ごめんね」
これからは神谷君で妄想しないと決めた。
神谷君と他の人でイチャイチャしてるところを妄想したらモヤっとしてイラッとしそうだから。
可愛い神谷君を知ったからかな。
どうしよう、フラグ回避してたのに自分から好きになって自滅してる。神谷君はホモォ嫌いなのに……まぁ、いいか。
「次はマヨコーンパンを半分こしよ!」
「温めた方が美味しいと思うので温めますね」
「うん!よろしく!」
今はできるだけ神谷君の傍にいて、もっと神谷君を知って、このまま俺の小さな恋心を育てよう。
「メロンパンを半分こしといたよ!」
「僕、このチョコクロワッサンを食べてみたいです」
「じゃあそれも半分こ!」
神谷君、君のこともっと教えてね。
−終わり−
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[mokuji]
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