(腐男子先輩×クール?後輩片思い)神谷


授業が終わると、僕は散歩同好会の教室に行き出席確認ノートに名前を書いて先輩の名前を確認する。

今日も先輩は出席していて、教室には居ないからもう散歩に出ている。
今日も僕は先輩を探しながらの散歩に出た。

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散歩同好会とは、校内や校舎の周りを歩き回るだけの活動だ。
目的は生徒や先生の気分転換、運動不足解消である。先生だと見回りと校舎の外観を気にしたり校内の点検等も兼ねる。

そんな散歩同好会の会員は主に先生だが、生徒も4、5人はいる。その内の1人は僕で、もう1人は。

「先輩、今日は此処でしたか」
「神谷君、静かに。今いいところだから」

先輩が草の茂みに隠れて双眼鏡で見ているものは、校内の友達以上恋人未満または恋人になりかけのホモ達(男子校だからホモカップルしかできない)である。
完全なる覗き見。もの好きだ。

僕は先輩の横にしゃがみ、双眼鏡を奪って見る。

「……ワオ、僕のクラスメイトだ」
「なんですと?!」
「あの2人付き合ってなかったのか。付き合ってると思ってた」
「神谷君のクラス羨ましい!」
「あ、キスした」
「ホモォ!ホモォ!!」
「先輩煩い」
「ほ、ほもぉ、ほもぉ」

双眼鏡を奪ったのに先輩も双眼鏡で見ている。
僕が奪うようになってから小さい予備を持ち歩いているらしい。

小声で「ほもぉ、ほもぉ、はぁ、はぁ」言って興奮してニヤニヤしてる先輩は正直キモイ。
けど、楽しそうで羨ましいとも思う。

「先輩、楽しい?」
「ぷまいです!おいひいです!」
「……意味わからないですよ」
「おおぅっ!ここで致すか!ここで致すのか性春!押し倒したー!リアルホモォー!」
「先輩帰りますよ」
「やだー!見るー!まだ見るんだぁぁぁぁー!」

人のセックス、しかも男同士の見て興奮して喜ぶな。クラスメイトもカーテンを閉めずに教室でヤるなよ。明日教室入りたくないな。

駄々をこねる先輩の後ろ襟を掴んでズルズル引きづって散歩コースに戻る。

「良いところだったのに!神谷君も見たら良かったのに!」
「共犯者にしないで下さい」
「俺は見守っているだけだ!」
「覗き見は犯罪ですよ」
「バレなければ大丈夫!」
「僕にバレた時点でアウトです」
「神谷君の鬼ー!悪魔ー!」

はいはい。好きなだけ言ってください。
取り敢えずあのクラスメイトに“見えてるぞ。カーテンを閉めるか寮の部屋に帰れ”ってメールしとくか。

「えっ、神谷君誰にメール?神谷君の彼氏?!」
「先輩の同室者に先輩の薄い本を燃やすように頼みました」
「嘘っ?!俺の萌が!ホモォが!歴史が!」

薄い本に歴史ってあるんですか……。
これ以上喚かれてもウザったいので「嘘です」と言ったら「信じない!ちゃんと目で見るまで信じないから!」と言われた。
僕って嘘を付かなさそうって言われるから先輩は信じないんだろうな。

「…………先輩にはいないんですか、彼氏」
「彼氏?いないよ。てか作らない。絶対に作らない。人のホモォok自分ホモォout。フラグなんて立たせない!」
「だから友人が少ないんですか」
「少ないくない!ちゃんと友達はいる!」
「ネットじゃなくてリアルではどうなんです?」
「…………俺、モテるから友達は出来ないのさ。みんな俺を好きになってしまうから友達はいないのだよ」
「うわー、同性にモテるなんて寒いですね。ゲイに受ける顔と性格なんて哀れです」
「嘘です!ごめんなさい!普通に友達は3人はいるから!3人はいるからぁぁあ!!」

リアルな数字が返ってきた。
仲良し4人組かな?

「同室者のケント君、いいんちょー、神谷君!の、3人!」

そのメンツは先輩を狙ってる3人の間違いでは?
僕は先輩とお友達と思ってない。好きなんだけど、言ったらフラグ回避してる先輩に逃げられて振られる。だから、言わない。

「僕を除いた3人ではないんですね。と言うより僕は後輩なんですけど」
「いいの。友達なの。俺の傍に来る物好きな友達なの」
「へぇ。じゃあ、いいんちょうって人も物好き?」
「腐仲間!」
「そうでしたか」

腐仲間と認識させて傍にいるんじゃないですか?
って疑うのは良くないか。同室者を疑うのも。

「ねー、何時まで俺は神谷君に引っ張られるのかな?そろそろ離してくれない?苦しいんだけど」
「あぁ、すいません。好き好んで引きずられていると思っていました」
「神谷君ってドS?!俺はドMじゃないよ?!どMそうな人紹介しようか?!」
「いりません。俺でホモな想像をしないでください。不快です」

俺は先輩が好きであって、好きだからこうやって回収したり迎えに行ってたりするんですけど。
他の人なんか考えられない。考えて欲しくない。そういう意味で不快だ。

「俺の事が嫌いになっても、BLは尊いので嫌いにならないで下さい!」
「…………先輩は好きですよ」
「え?」
「ミジンコの雄同士が近くに居るだけでもホモォって鳴いて興奮しそうですよね、先輩って」
「ちょっ、なにそのイメージ?!俺、♂×♂ならなんでもいいってわけじゃないよ?!」
「はっ、どうだか」
「笑った?!今、鼻で笑った?!神谷君!BLは素晴らしいものだよ!BLの良さを教えてあげるから俺の部屋に来なさい!」
「わかりました。では、行きましょうか」
「へ?」
「先輩部屋。教えてくれるんでしょ?」
「え、あ、うん」

こうして僕は先輩の部屋に上がり込む事になった。
BLの良さなんて教えて貰っても右から左に聞き流す。
先輩を知るために部屋に来ただけ。

「神谷君!この絵可愛いでしょ!でも内容は超汁まみれのドロドロエッチ沢山!エロ重視ならコレ!スト重視なら……コレかな!スト重視でもシリアス系とギャグ系とホモはオマケって感じのファンタジーとか部活系が有るよ!どれ読む?!俺のオススメはー……」

興奮しながら話す先輩は超ニマニマしてる。

カップルを見ながらのニヤニヤよりもこっちのニマニマの方がいい。
俺に向けてるニマニマだから。
俺以外には笑って欲しくないなって。
こんな事を思えるのは先輩だけ。

「普通の漫画本を貸してください」
「BLの良さを知ってよ!」

今はこの関係のままでいいや。

−終わり−


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