白雪 | ナノ
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―ゾワッ…

「!?」
「ど、どうしたの鳶尾さん?」

僅かに感じた殺気。京都は反射的に腰の刀に手を遣り、鯉口を切った。
リビングの細部に至るまで視線を走らせるが、何も可笑しな物は見当たらない。
京都の態度の変化に反応したのか、獄寺も縮んでいるというショックから我に返った。
京都には獄寺が何処の誰に反応しているのか分からず、彼が綱吉のいる方向にダイナマイトを投げた事に驚くしかなかった。
だが、

―パァン!

何時もの爆音とは比べ物にならない可愛らしい破裂音と共に、中から鳩と紙吹雪が飛び出した。
どんな経緯があったかは知らないが、床に四散していた紙切れの正体は分かった。現在の獄寺の戦闘能力はゼロと考えていいだろう。

「コラ、山本放せ!奴らがそこに!」
「だーめーだ。何し出すかわかんねーからな」
「…京子、沢田、此処では宿題は出来んだろうから2階に移るぞ」
「(2階はダメー!武器のオンパレードがーー!!)」
「!お、おい!キャッチボール教えやがれ!」
「おっ、そーゆー事なら遊んでやる!」
「(んなーーー!?)」

京子と綱吉だけは避難させようと京都が二人をリビングの入り口まで連れて行った時、とんでもない事を獄寺が言い出した。
家が大惨事になると綱吉は慌てるが、京都は何かあると思い黙って様子を伺っていた。
獄寺は小さな体で懸命に飛び跳ね、捕球の構えをとる。
何処からか野球ボールを取り出した山本は、子供にも容赦ない剛速球を繰り出した。
すると、ボールは何もない筈の所でぶつかった。誰かの呻き声のようなものが聞こえ、ドサリと何かが落ちる。
獄寺と山本が同じやり取りをもう一度繰り返し二人目の呻き声が聞こえたところで、声の正体が露になった。

「この人達どなたー!?」
「はっ、見えているのか!?」
「しまった!ダメージで光学迷彩が!」
「えれーぞ獄寺、見直したぞ」
「!リボーン!」

リボーン曰く、この謎の二人はリボーンと同じ赤ん坊のヴェルデというマッドサイエンティストの部下らしい。
ヴェルデが開発した光学迷彩は、部下に裏切られる事を防ぐ為にある年齢以下、つまり赤ん坊には見える仕組になっているようだ。
それで獄寺にしか見えなかったのだ。
そこからは早かった。
見付かったのならばと居直り正面から襲い掛かってきた暗殺者を、死ぬ気になった綱吉がものの数秒で伸してしまったのだ。
暗殺者二人はリボーンによって国外に追放される事となった。

「すげーなツナ!泥棒退治しやがった!」
「すごいよツナ君!」
「いや、今日のは俺じゃなくて…真ん中分けのちっちゃい子のお陰だよ」

京都にはその意味が分かる。真ん中分けのちっちゃい子は照れ臭そうに笑っていた。


   *  *


「なるほど。獄寺が小さくなったのはこの武器チューナーの仕業か」
「ああ。俺の銃も使い物にならなくしやがった」
「こっ、ここここの度は大変ご迷惑をおかけしました!申し訳ありません!」

京子が帰った後、山本と京都はリボーンから詳しい話を聞いた。
現在京都に刀を向けられ土下座している男は、ボンゴレお抱えの武器チューナー・ジャンニーニ。
彼はリボーンの依頼で来日し、綱吉の部屋でリボーン・獄寺・ランボの武器の改造を行っていた。
しかしリボーンの銃は発砲できなくなり、獄寺のダイナマイトはパーティーグッズさながらの玩具に変えられた。
ランボの10年バズーカは、精神はそのままに10年前の体と入れ替わってしまう始末。彼曰く、改良と改悪どちらも同じ改造であるらしい。
しかしその所為で獄寺はこの有様だ。迷惑千万な話である。

「……まぁ獄寺、今回のところは勘弁してやれ。その身体のお陰で沢田は守られたんだ」
「…チッ…次はねーからな」
「はいっ、申し訳ありませんでした!あの、ところで…貴方が鳶尾京都様ですか?」
「ああ、そうだ」
「リボーンさんから事情は伺っております。この度は私、貴方にある物を届けに参りました」
「……私に?」

一体リボーンが自分の事をどのように話したのか気になったが、まずはその“ある物”だ。
京都の前に出されたのは、野球ボール1つが入るくらいの小さな箱。
箱は箱でも金属でできた箱で、見るからに高級感が漂っている。
部屋にいる全員の視線が箱に集まっている。宛先は自分なので、京都はそっと蓋を取った。

「……確か、貴様が造るのは武器だったな…装飾品ではなかったな…?」
「はい。一見アクセサリーに見えますが、それも立派な武器ですよ」
「造ったのはこいつの父親の方だ。間違いはねー筈だぞ」
「ブレスレットでもか?」

箱の中で鎮座していたのは、これまた金属でできたブレスレットだった。
白銀のそれはとぐろを巻いた龍を型どっていて、3本の角が三つ又の矛のようになっている。
だがこれが一体何になるのか。某高校生探偵のように麻酔針でも飛び出すのだろうか。

「紅桜篇のっスよねコレ…」
「おっ、獄寺もうそこまで読んだのな!」
「レオンの唾液を混ぜて造った変形するブレスレットだ。試しに真ん中の角を引いてみろ」

言われた通り引いてみた。輪ゴムを引っ張るように容易く引ける。
途端、ブレスレットが光り出した。
他の2本の角が横に長く伸びていく。
慌てて伸びる棒を握った時、光が消えてブレスレットが真の姿を見せた。

――京都の手にあったのは、真っ白な弓矢だった。

「ゆ、弓…?」
「しかも日本弓っスね」
「お〜京都らしいのな!」

竹で造られた白い弓と、白金のように白っぽいジュラルミン製の矢。
彼女の異名“戦場の白雪”に見合う、白を基調とした武器だ。

「名付けて“てめえらァァアアア!それでも銀魂ついてんのかァァアアア!?ブレスレット”だ」
「名前長ッ!」
「名台詞だよなソレ!映画めっちゃよかったー!」
「このオタクが……鳶尾?」

男三人がはしゃぐ中、京都は黙りこくって何かを考えていた。
そして意を決したように顔を上げ、家庭教師に向かってはっきりと告げた。

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