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武器チューナー


ぼくのゆめ
山本 たけし

ぼくのゆめは、やきゅうせん手になることです。
きょ年のなつ、お父さんとやきゅうのしあいをみに行きました。
せん手の入がボールをなげたりヒットをうったりフライをとったりするところがすごくかっこよかったです。
ぼくもみんなにおうえんしてもらえるようなせん手になりたいとおもいました。
いつかアメリカの大リーグに行って、ホームランをいっぱいうちたいです。
だから今、ぼくはリトルリーグでいっぱいれんしゅうをしています。



   *  *

「…お前らしい作文だな」
「ハハッ、こん時から大リーグっつってたのかー!」
「おい、字を間違えているぞ。“入”ではなく“人”だろう」
「うわっホントだ!俺漢字苦手だったしなー」

今日京都達のクラスには、自分の子供の頃の夢を調べるという課題が出ていた。
夏休みが近付いた茹だるような暑さの中、山本と京都は沢田家への道を歩いている。
目的は別の班である綱吉の偵察。因みに山本と京都そして獄寺は同じ班である。
獄寺のことだから宿題をやろうなどと誘うだけ無駄だと思い、彼には何も言っていない。

「そーいえば京都のはどーすんだ?作文なんて持ってねーだろ?」
「『さむらいになりたい』とでも書いておくさ。嘘ではないし、子供なのだから非現実的でも可笑しくはないだろう?」
「ちなみに今は?って聞かれたらどーすんだ?」
「…警察」
「ハハッ、それも嘘じゃねーな!おっ、ツナん家見えてきた」



武器チューナー



本日も騒ぎ声が響く沢田宅。それに何の疑問も抱く事なく、山本は沢田宅のインターホンを鳴らした。
程なくして扉が開いた。出て来たのは綱吉で、奥の方には京子の姿もある。そこで彼が京子と同じ班だったことを思い出す。

「よおっ、宿題進んでっか?」
「同じ班の者に偵察を頼まれたのだが…それどころではなさそうだな…」
「(山本、鳶尾さん!タイミング悪ー!)」

またマフィア絡みで面倒事が起きていると、何となく勘でわかった京都。
ぐるりとリビングを見渡したが、銃弾や爆弾の痕跡は見当たらない。あったのは何故か紙吹雪。そして…――

「こんな暇あんなら外の敵倒して来い馬鹿共が!」
「何だ獄寺!来てたのか」
「お前自分の班の宿題もせずに何をしているんだ?」
「(山本と鳶尾さん、違和感なしーーー!?)」

輝く銀髪に碧の眼、指や首元で光る金属アクセサリー。喧嘩腰の口調。
それらはどれも、綱吉達の友人の獄寺隼人という男に当てはまる特徴だ。
しかし今彼は、その全ての特徴を以ってしても“獄寺隼人”であるか疑ってしまう状態に陥っていた。
現在の彼の身の丈は大人の頭一つ分、某家庭教師と同じ位の大きさになっているのだ。
しかも悲しい事に、この場でその事に気付いているのは、沢田綱吉只一人であった。

「え、獄寺君?」
「あ!ち、違うよ!」

ランボの友達だと思い込んでいる京子に綱吉は慌てて弁明する。彼女は何も知らない方がいい。
二人に『従弟だ』と誤魔化すと、山本は笑って獄寺を抱き上げた。

「ハハハ!よく見りゃそーだな!何か獄寺な気がしたんだよなー」
「おっ、おい!」
「この髪といい太々しい目付きといい、奴にそっくりだな」
「クリソツなのな!」
「てめ!放せ、ブッ殺すぞ!くそっ、何故届かねぇ!?」
「ハハハ!涼しーぞ!」
「おい山本、次私に抱かせろ」

腕を振り回して暴れるが山本には全く届かない。自分のリーチを獄寺は分かっていなかった。
京都に至っては赤ん坊かペットかを触りたがる子供のような精神丸出しである。
何故獄寺である事に彼女が気付かないのか。もし気付けるなら、キャプテン・カツーラは遠い昔に亡き者になっているだろう。
綱吉が止めに入ろうとしたところに、最早お約束の問題児がやって来た。

「あららのら?どこのチビ助かしら?」

縮んだ獄寺を見ながらリビングに顔を出したランボ。またややこしい奴が来たと、綱吉は頭を抱える。
山本が獄寺を下ろすと、自然とランボと目線が同じになる。しかしそれでも獄寺は己の状況に気付かない。

「ランボさんの子分希望かしら?にしてはダサい髪型」
「………」
「あららのら?無視してくれちゃって。俺っちを怒らすと怖いよ?ガツンといっちゃうよ?」
「付き合ってる暇はねー!」

何時ものようにランボが獄寺に減らず口を叩き、何時ものように獄寺がランボを蹴り飛ばす。
ホント獄寺そっくりなーと山本は相変わらず笑っていたが、京都は漸く不思議に思い始めた。この童あまりにも獄寺に似ている。まさか本人か…?
暫し考えに耽っていたが、突然獄寺が顔色を変えた事で思考は中断された。
天井を凝視しながら、綱吉に必死に何かを伝えようとしている。
仕舞いにはダイナマイトまで取り出したが、それらは山本によって没収される。

「コラチビ、獄寺みてーになっちまうぞ?」
「戯けが、沢田の家を爆破する気か」
「何しやがる馬鹿共!てめーあいつらが見えねーのかよ!?」
「ちっこい足向けんなこっちに」
「何言ってやが……足近ッ!」

己の体の異変に漸く気付き、あちこちを触る獄寺。
そして京都と獄寺は同時に事態を理解した。

「縮んでるーーー!!」
「(気付いたーーー!!)」
「(獄寺今更だな。まぁ、私が言えた事ではないが…)」

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