白雪 | ナノ
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「よぉツナ、獄寺!一緒に帰ろーぜ!」
「あ"ぁ!?野球馬鹿てめー部活はどうした!?」
「休み!ついでにツナん家で宿題やっちまおうと思ってさ!」
「何勝手に決めてんだテメー!アホはすっこんでろ!」
「ま、まあまあ獄寺君いいじゃん。三人でやった方がきっとはかどるよ」
「じ、十代目がそう仰るなら…」

明日から春休み。とある中学校では、放課後の鐘と共に生徒達が各々帰路についている。
冒頭の三人も、他の生徒に混じって校門の外へ出ていた。

一人は沢田綱吉。通称ツナ。小柄な少年で、逆立った髪と大きな眼は蜂蜜色。
一人は獄寺隼人。綱吉を“十代目”と呼び慕う彼は、日本人離れした濃い銀髪に碧色の眼。
一人は山本武。3人の中では最も長身で、黒髪に茶色の眼の笑顔が絶えない少年。
傍から見れば仲良し三人組ともいえるこの面々は、今日も今日とて平凡な町で暮らし平凡な中学校に通っていた――まあ傍から見ればの話だが。
本日三人は、綱吉の家で一緒に宿題を済ませようと沢田宅へと足を運んでいた。帰宅途中に他愛ない会話が繰り広げられる。

「くっそアホ牛の奴!十代目のお手を煩わせやがって…!」
「あはは!ツナ大変だな、チビがいっぱい家にいるもんな!」
「ランボも大変だけどリボーンも大変だよ。所構わず銃とかバズーカとか出してくるし…」
「十代目!何かあったら俺を呼んで下さい、すぐ馳せ参じます!」
「(いや、君も君で大変なんだけどね…)」

話の内容は、大抵綱吉の家にいる居候達。厄介な子供が数名いるので、綱吉は毎日被害を受ける。
その日頃からの文句を一緒に怒ったり笑ったりして聞いてくれる二人の存在は、綱吉には非常にありがたい。
そんな何時もと似たような会話を繰り返していると、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「あ!多分あっちだもんね!」
「…ランボと言ったな?さっきから“多分”と“かも”が多いが、本当に道が分かっているのか?」
「ナメんなよボケェ!ランボさん賢いから分かってるもんね、ガハハハハハ!あ、あれネコ!」
「………はぁ……」

声のする方を見ると、全身黒服の誰かが子供を肩車して歩いて来ていた。
三人の「あ」と言う声がハモった。その子供とは沢田家の居候の一人、ランボだった。
勝手に外へ出たのか某家庭教師にブッ飛ばされたのか。どちらにしろ、赤の他人に迷惑を掛けている。
血相を変えて、綱吉は黒服と仔牛の方へ駆け寄った。

「ランボーーー!?」
「あ、ツナーーー!!」
「ぐはっ…す、すみませんでした!うちのチビが迷惑掛けてしまって…」
「こんのアホ牛!十代目に恥掻かせんじゃねー!」
「んべー!俺っち京都に道案内してあげてただけだもんね!アホ寺の分際で生意気言うなァ!」
「アホはおめーだァアア!!」
「…京都?」

綱吉を見付けるなりその腹にタックルをかますランボ。苦しげにそれを受け止め、綱吉は慌てて黒服に頭を下げた。
綱吉に迷惑を掛けるなど言語道断な獄寺は、減らず口の仔牛と取っ組み合いを始めている。
そんな中、何時もならニコニコ笑っている筈の山本が、黒服の名前を聞いて少し驚いた顔になった。
漸くまともな話ができる人間に会えたと思い、京都は三人に話し掛けた。

「丁度いい、2・3質問があるのだ。聞いてくれるか?」
「はい、何でしょう?」
「ターミナルが見当たらんのだが、此処は一体何処だ?」
「「ターミナル?」」
「ターミナルを知らんのか?天人が江戸n「おい」…何だ?」
「…お前、何モンだ?カタギじゃねえな…」
「…随分嫌な表現をしてくれるな…カタギでない事に違いはないが、私は警察だ」
「へっ、堂々と腰に凶器ぶら提げる警察が日本の何処に…いるってんだ!」

一人京都を怪しげに見ていた獄寺が徐に口を開いた。そして腰の刀を見付けた瞬間、顔色を変えて懐に手を入れる。
そんな獄寺の様子を見て、京都も反射的に柄に手を遣った。と、同時に目の前に迫って来た何か。

「果てな」

綱吉はまずいと思った。
獄寺の悪い癖なのだ。少しでも綱吉にとって危険な者がいれば、誰彼構わず攻撃に出る。
懐から出した物は彼の武器、ダイナマイト。あれを食らったらただ事では済まない。
早く逃げて、と黒服に叫ぼうとした。が、その心配はなかった。

「う、そだろ…?一瞬で……」
「何かと思えば爆弾か。銃刀法違反だ、取調べをするから付いて来い」

瞬きした次の瞬間には刀は鞘に収められていた。足元には全て切り捨てられたダイナマイト。
今の一瞬の出来事と彼女の出で立ちで、綱吉はある仮定に行き着いた。
何とも現実離れしていて自分でも信じられないが、あの発言から想像するに…――

「…銀魂の、鳶尾京都さん……?」

綱吉の呟きとも言える言葉を聞いて、京都はふと彼の方を向いた。さり気なく獄寺が彼の盾に回っている。

「如何にも、私は真選組の鳶尾京都だが…」
「え、真選組?新しいの“新”じゃなくて真実の“真”か!?」
「……そうだ。江戸幕府直轄武装警察・真選組だ」
「…ツナ…」
「うん…」
「…な、何だよ。おい野球馬鹿、どういう事だ!?」
「獄寺君、後で教えるからちょっと待ってて。鳶尾さん…俺の言う事、驚かないで聞いて下さいね?」

綱吉と山本は一度顔を見合わせた。そして綱吉は再度京都に目を遣る。
一人話に付いていけてない獄寺は渋々黙っていた、空気の読めない仔牛の口を押さえて。
少しの間戸惑っていたが、覚悟したように綱吉は口を開いた。

「鳶尾さん…此処は、あなたのいた所とは違う世界です。いわゆる…異世界、なんです…」
「………は………?」

突拍子も無い事を言われると思っていたが、予想外過ぎた。異世界、だと…?
呆然としていると、目の前に何かがずいっと差し出された。どうやら本のようだ。
しかし表紙を見た途端、京都はぎょっとした。そこには、自分そっくりの人間が画かれている。

「これが証拠っス」
「俺達の世界では、鳶尾さん達はその漫画の登場人物なんです」
「それ本当ですか十代目!?」
「そっか、獄寺知らねーのか銀魂」
「あ"?何だその危ねー名前は?一つ間違えたらやべー事になるだろーが」
「う、うん。でもそういう名前の漫画なんだ。ホラ、あの表紙!あの人とそっくりでしょ?」
「刀捌きとかからして、コスプレじゃなさそーだしな」

一方、京都は自分の目に映った物が信じられなかった。中を捲れば、自分の知っている人間の顔が並んでいる。

「局長、副長、沖田に山崎。銀時まで…」
「…あ、あの鳶尾さん…その、出来れば何があったか、話してもらえますか…?」

「立ち話もなんだ。折角だから、ウチに上がるといいぞ」
「!?」

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