青そら | ナノ
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「そうか、遂に運転免許を取るか!」
「お金がないんで、バイクの方だけですけどね」
「それでも凄くいいじゃない!頑張ってね?」

記憶喪失の件から数ヶ月。
何となく見抜いてたらしいみんなのお陰で、私は少しずつ“自分”が出せるようになってきていた。
みんなを少し砕けた呼び方にしてみたり抱き付いてみたりボケてみたり、その他諸々。
その内お登勢さんに「金目の物でねだってみな」って言われたから、思い切って言ってみた。
――バイクの免許のためにバイト代を貯めたい、と。
今まで私のバイト代は殆ど家賃や食費に回ってて、手元に残るお金は雀の涙以下やった。
それを私欲のために使うとなると万事屋の家計が大変な事になるから、このおねだりは遠回しにお金の要求になる筈。
それが解ったらしい銀さんと新八は、引き攣った笑顔ながらもすぐに了承してくれた。
実は2人の顔に少し戸惑ったけど、お登勢さんがばっちりゴーサインを出してくれたから無事決行。
元々99ドラッグの時給がいいお陰で、バイク免許に要る費用はすぐに集まった。
今週末にある試験に受かれば、晴れて店用のバイクを使う事が出来る。

「じゃあ今日は上がり。帰り道気を付けてね、今度は町に宇宙生物がうろついてるらしいから」
「結構危ない奴らしいぞ。何にでも寄生できて繁殖力も高いんじゃと」

あれ?それってアレ、パンダダのお話?星の海と書いて「うみ」なあの坊主さんのお話?
うわー時が経つのって早いなぁ。私はこの世界に来てからもうすぐ一年経つんちゃう?
てか、この話の間どうしてよう?あんなゴツいエイリアンとマトモに戦える気せぇへんねんけど。
でも銀さん達が現場におる間私だけのうのうと万事屋やバイト先におるなんて嫌やし――

「恭!」「恭さん!」
「!あれ、銀さんと新八?」
「大変なんです!神楽ちゃんが振り込め詐欺に…」
「え、でも銀行コレ……」
「そうだ。騙されて金を振り込もうとしたはいいが、当然金なんかあるわけねーだろ……そしてこんな凶行に…」
「どうしよう…僕らどうすれば…」
「(ンなアホな…)」

思わぬ所で銀さんと新八に遭遇した。そう言えば此処、“凶暴犯が立て篭もってる”銀行の前やった。
ショック受けてる2人には悪いけど、話を知ってる私はこの辺には参加しようとは思わへん。
だってこれドア開けたら、めっちゃグロいモンがおるんやろ?そんなんと関わりたくないし…

「「間違えました」」
「……………うぷ…」

…今のはちょっと吐きそうやった。だって臓器っぽいのが人の口から溢れてるとか……なぁ?
うん、巻き込まれる前に私だけでも避難しておこう――

「待て恭てめっ、一人だけ逃げようたってそうはさせねェェ!」
「ぷぎゃァァアア!?」

ぎゃああああ銀さん足掴むなや引き摺り込まれるゥゥ!!
しかも坊さんの口の中からエイリアンの口っぽいの出てきた!アカンてもうコレ某宇宙生物映画モロパクリやって!!

「あああ悪霊退散!アブラカダブダ!エクスペクトパトローナム!テクマクマヤコンんんん!」
「恭さんそんな安直な魔除け呪文が効く訳ないです!しかも最後のに至ってはただの変身魔法ですよ!?」
「言ってる場合か!神楽ちゃん、離しなさい!メッ!!」
「ぺっ、お前ら全員道連れじゃー!」
「「「ぎゃああああ!!」」」

―…来る…

「!……は?」
―凄ぇ猛者だ…斬りてぇ…

「何を…――」



「――おっ、いたいた」

突如、響き渡る轟音。エイリアンの力が緩んで拘束が解かれた私ら4人。
銀さん達は轟音の正体が気になるみたいやけど、私はこの声の方が気になってしゃーなかった。

―久々に見たぜあんな強者…斬りてぇ、斬らせろ。俺を抜け…


…うわぁ、久々に出たで妖刀。前からちょくちょく夢に声だけ出て来て散々唸らせてくれよった奴。
最初は寝れんくらいビビってたけど、頻繁に続くからもう慣れた。
最近大人しかったのに強い人の気配に反応するとか、どんだけ戦闘狂?
「きも…」って私の呟きは、銀さんと新八の「ぱぴィィイイ!?」の叫び声に掻き消された。

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