青そら | ナノ
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「星海坊主ぅぅ!?星海坊主って…あの…えっ!?神楽ちゃんのお父さんが!?」
「星海坊主?何それ妖怪?坊主じゃねーぞ、うすらってるぞ頭」
「オイ、うすらってるって何だ?人の頭をさすらってるみたいな言い方するな」

所変わってファミレスにて。
私・新八・銀さんの順に座る前には、神楽とそのお父さんが座ってる。
堂々とパフェを頬張る銀さんの隣で、新八は驚いた風に、私はしげしげと神楽パパを観察。
いやー紙や画面で見るのとはインパクトがエラい違いや。そのバーコー…げふんげふん。

「ウスラー、紹介するネ。こっちの女子高生っぽいのが恭」
「ぽいって何?本物やねんけど」
「こっちのダメな眼鏡が新八」
「ダメって何?」
「こっちのダメなもじゃもじゃが銀ちゃんアル」
「いや、だからダメって何?」
「私が地球で面倒見てやってる連中ネ。挨拶するヨロシ」

適当且つ改変の混じった紹介をして得意げな神楽。
それとは反対に、フンと鼻を鳴らして訝しげに眼鏡を指で押し上げる神楽パパ。
…思ったけど、眼鏡かけながら暴れまわれるん?すげー

「お前ら、何かよからぬ事でも考えてたんじゃねーの?夜兎の力を悪用しようって輩が巷にゃ溢れてるからな」
「なんだァ?悪用ってどういうことだコラ。てめーの頭で大根でもすりおろすことを指すのか?大体長い間娘ほったらかしてた親父が、とやかく言えた義理かよ」
「こちとら必死に探し回ってたっつーんだよ!ちょっと目ェ離したら消えてたんだよ。難しーんだよこの年頃の娘は!ガラス細工のように繊細なんだよ!」
「何言ってやがんだ。ガラス細工のような危なげな頭しやがって」
「てめェェ!今の内だけだぞ強気でいられるのは!30過ぎたら急に来るんだよ!何時の間にか毛根の女神が実家に帰ってたんだよ!!」

どんどんヒートアップしていって、遂には銀さんに掴みかかる神楽パパ。つーか話の趣旨変わってまっせ。
ギャーギャー喧しい2人を店員さんや他のお客さんが遠巻きに見始めたから、新八があわあわと止めようとする。
私も協力したいけどゴメン、この続き知ってるし………煩いのはその2人だけじゃない。
斬らせろ斬らせろってうっさい刀がここにもおる。気休め程度やけど、暴走せぇへんように握りしめておく。

「とにかく!てめーのような奴に、ウチの娘は任せてられねェ!神楽ちゃんは俺が連れて帰るからな!」
「なーーに勝手に決めてんだァァ!!」

今までご飯にありついてた神楽が、鋭い蹴りをパパにお見舞いさせた。
…まぁ、そりゃ怒るわな…?

「今まで家庭ほったらかして好き勝手やってたパピーに、今さら干渉されたくないネ。パピーも勝手、私も勝手。私勝手に地球来た。帰るのも勝手にするネ」
「…神楽ちゃん、家族ってのは鳥の巣のようなもんだ。鳥はいつまでも飛び続けられるわけじゃねェ。帰る巣がなくなれば、いずれ地に落っこっちまうもんさ」
「パピーは渡り鳥。巣なんて必要ないアル。私もそう。巣なんて止まり木があれば充分ネ」
「それじゃ何でこの止まり木に拘る。ここでしか得られねーモンでもあるってのか?」
「またあそこに帰ったところで何が得られるネ?私は好きな木に止まって好きに飛ぶネ」

うーん難しい。普通の親子の意見の食い違いに見えるけど、スケールが違うもんなぁ。
なんせ2人共夜兎族やし……

「…ガキが、ナマ言ってんじゃねーぞ」
「ハゲが、何時までもガキだと思ってんじゃないネ」

……うん、2人共夜兎族やし…親子喧嘩も壮絶そうやなぁ…

「「ほぁちゃあああああ!!」」

傘を手に、豪快にガラスを突き破って外へ飛び出した親子。
爆音が続いてて、その威力のすごさがよくわかる。

「ちっ、あンの馬鹿親子…!」
「えっ、ちょ、銀さん!?」
「俺ァあいつら追いかける。新八、後よろしく」
「おいぃぃぃ!この後始末をやれってかァァ!?」

片手をあげて早々に立ち去ろうとする銀さん。
巻き添え食らうのは嫌やから私も銀さんと一緒に行こう。
そうして銀さんに続いて私も片手を挙げようとした時やった。
――ふと、腰で軋んだあの刀。


―…欲しい……あの男の血が…


「………新八ぃ!ちゃっちゃと片付けてまうで!」
「残ってくれるんですか!?ありがとうございますぅぅ!」

思い通りにはさせん。お前は徹底的に戦場から遠ざけたるからな!
店長さんの怖い顔を見ないようにして、渋々掃除道具を手に取った。
あ、勿論会計と弁償代は星海坊主さん持ちで。


   *  *


「……帰れよ」

屋根に空いた大穴、改札が崩壊した駅、遠巻きに集まる野次馬。
そんな野次馬の視線の先にいるのは、マントを羽織る中年の男、しゃがみ込む中華服の少女、銀髪の若い男。
その銀髪の男の声が、静かな空間に響いた。
何を言われたか一瞬理解できなかった少女は、呆然とした声を小さく漏らす。

「お前にゃ、やっぱ地球は狭いんじゃねーの?いい機会だ。親父と一緒にいけよ……これでさよならとしよーや」

冷淡な言葉。少女の知っている気だるげな口調が、今は自分を突き放そうとしていた。

「……何で…何でそんな事言うネ…」

―帰りたくない。
―この町に…あの家に居たい…

「ちょっと待ってヨ!なんで…」

歩いて行く銀髪を呼び止めても、振り返る事なく遠ざかって行く。
眠たげで、怠そうで、それでも温かい眼差しが……向けられることはない。

「何で…何で…」

小さくなっていく背中を追っていた目線は、だんだんと地面へ下降していく。

「……何で…――」

小さくか細いその声は、遂に誰の耳に届く事もなく…

――床に滲んで消えていった。



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マヨラ13とかいろいろ書きたいのあったけど、更新停滞フラグ立ったので断念。
シーズン1最終篇です。

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