青そら | ナノ
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「撃てェェェ!蝮Zだァァ!!」

瓦礫や木片が雨みたいに降って来る中、私らの背後から聞こえた、獣の咆哮のような爆音。工場長の蝮Zが赤い光線となって反撃に出たのだ。私らは無我夢中で走りだした。
重い看板を背負ってる私とジミーさんは思うように走れへん。光線は一番端にいた私のすぐ側までやって来た。

―迫り来るボンネット…


「!恭ちゃん!?」

急に、足が動かんくなった。2人の声が何処か遠くに感じる。近付いて来る光線をアホみたいに目ぇ開いて凝視する私。

―けたたましく鳴るクラクション。周囲の悲鳴…


足が竦み、汗が噴き出て、声が枯れる。その場に縫い付けられたみたいに、体がピクリとも動かへん。目が眩む程の強烈な光が辺りを照らして、私を飲み込んでいく…

「いかん!」

―あ、このシーン知ってる。確か―――




――――――――――
―――――――
―――――



「局長ォォ!局長、しっかりして下さい!局長ォォ!!」

煙が晴れた頃私の目に飛び込んできたのは、身を挺して私を庇い、倒れたゴリさんの姿。
砲撃は免れたみたいやけど気を失ってるみたいで、ジミーさんの必死な呼び掛けにも反応がない。
少し離れた所で転がってる私は、それをボーっと眺める事しかできんくて…
ジミーさんの縋るような声を聞いて、ゴリさんの頭から滲み出る血をただ見てるだけで…

―その血溜りに、覚えがあって…


「っ、…うぅ"、ぁ……!」

ズキリと頭に痛みが走り、ジクジクと広がっていく。これは私の過去…?思い出したかった筈やのに、今は怖くて仕方ない。
苦痛に顔を歪める私の耳に、遠くの方のおやっさんの狂ったような笑い声が届いた。
何で笑えるんや?人を騙して、傷付けて、壊して、何でそんな楽しそうに笑えるんや?
許せへん、負けたくない。けど動けへん、なんて非力。畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生――


「どうぞ、撃ちたきゃ撃って下さい」
「江戸が焼けようが煮られようが、知ったこっちゃないネ」
「けどコイツだけは撃っちゃ困るぜ」

悔しさに歪む私の眼前に現れた、3つの影――志村さん、神楽さん、坂田さん。
おる筈のない人達が私の前に立ってる。何で私がここにおる事知ってんの?何で工場長に立ちはだかってんの?……いや違う。

「な、んで、ここにおるん……まさか、私探しに来たとか言わんよな?言うた筈や、捜さんとってって!今の私に…何も覚えてへん私には、誰にも会う資格がない"ッッッ!?」
「グダグダグダグダ小難しいんだよ。ポエマーな中学生気取りですかコノヤロー」

脳天に容赦なく落とされた3つの拳。目がチカチカする中、私を縛ってた看板や縄を坂田さんが外してくれた。
漸く解放された手を地面に付いて、私に背を向ける3人を見上げる。顔は見えへんけど…凄く怒ってる気がした。

「『優しくしてくれた人達に、いっぱい隠し事してた』?乙女に秘密の1つ2つは付き物ネ、何も悪くないアル。ワガママは言っていいと思うけどな」

「『“自分”が変じゃないか、見せる自信がなかった』?かぶき町は変人の集う町です。1人増えたところで、今更何も変わりゃしませんよ」

「『捜すな』だって?」



「「「――家族捜して何が悪いんだよ」」」

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