▽ 5
――なんで…どうして……
―思い出せ恭!お前は俺や銀時と同じ攘夷志士として今尚街を駆ける英雄だったんだ!
―本当に災難だったわね恭ちゃん。後でそのクソパーマから慰謝料ふんだくってやりなさいね?――こんな謎だらけの私を…
―また厄介なモンに罹りよってからに…
―そんな言い方ないでしょう。災難だったわねぇ恭ちゃん。――こんな素直になれへん私を…
―ふざけるなよ!大事な友達を見殺しにできるわけないだろ!?
―意地でも連れて行くぞ!どれだけ腕や記憶が吹っ飛ぼうと!――なんで、みんな………
「『なんで』だって?簡単な事だろ」
何時の間にか3人に続き、真選組の面々がズラリと恭の前に並んで立っている。
その中で、ふと交わる視線。銀時が後ろを振り向き恭を見下ろしていた。
ほんの数日間の記憶だが、その中でも見た事がない、凄く穏やかで優しい顔だ。
彼から紡ぎ出された言葉が、恭の鼓膜を優しく震わせ、心の奥深くに甘く浸透する。
「みんな――お前が好きなんだよ」
―おい恭、いい加減目ぇ覚ませ…――――――――――
―――――――
―――――
誰もいない、何もない
真っ白いだけの空間に佇んでいる“ワタシ”
―どうだい、恭。少しはこっちの世界に慣れたかい?
―ありがとう恭ちゃん、元気出たよ!何だか私乗り切れる気がする!
―ワン!忘れていた大切な事が、
―恭がか〜、可愛らしか名前じゃ。
―……信じてやるよ、お前の話。
―恭と俺ァトモダチなんでね。大切な人達の顔が、声が、心が、
溢れて、溢れて、溢れて、溢れて
―恭ちゃん!
―恭さん!
―恭、白しかなかった空間が、
色とりどりの花で溢れかえって…
独りだった私の周りが、
たくさんの人達に囲まれていて…
――温かい想いが、頬を伝った。
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―――――――
―――――
「ガキはすっこんでな。死にてーのか?」
「あんだと?てめーもガキだろ!」
「何だよオメーら?みんな揃ってベジータ気取りですか?」
「ぶっ殺すぞテメー。不本意だが仕事の都合上、一般市民は護らなきゃいかんのでね。それに……コイツを大事に思ってんのは、お前ぇらだけじゃねぇんだよ」
俯いている恭を優しい眼差しで見下ろす土方と沖田。その小さな背中を暫く見詰めた後、再び工場に向き直る。
「そういう事だ!撃ちたきゃ俺達撃て」
「おうよ!チン砲だかマン砲だか知らねーが、毛ほども効かねーぞ!」
「そうだ撃ってみろコルァ!このリストラ侍が!」
「ハゲ!リストラハゲ!!」
口々に発せられる挑発に、工場長の堪忍袋の尾が切れた。
「俺が何時ハゲたァァァ!上等だ、江戸を消す前にテメーらから消してやるよ!」
「私達消す前に、お前消してやるネ!」
「行けェェェ!!」
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