青そら | ナノ
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「これより、第56回帯刀免許取得試験、実技の部を開始する」

実技キターー!筆記パープーやったから実技で点取らな!
筆記への絶望と実技への緊張でガクガクしてたら、応援に来てくれてた近藤さんが頭わしゃわしゃしてくれた。ちょっ、乱れ髪になる!与謝野晶子な頭になる!
山崎さんが教えてくれたやり方で防具を付けて会場に向かうと、50人くらいの試験官が整列してた。
……え、試験官が?受ける人ちごて試験官が!?みんな近藤さん以上にゴリマッチョやねんけど!戦えってか!このゴリラと戦えってかァァ!ムリ!立ってるだけでもチビりそおおお!

「…近藤さん…アイツ、ヤバくね?」
「大丈夫だともトシ!見ろ、あのキリリとした戦士の顔を!」
「いやアレぜってーパニクってるだろ。水面下では軽く暴走してるツラだろアレ」
「ホントだ、手と足が一緒に出てらァ。なんつーベタな事やってんでィ」
「周りクスクスしてるし。恭ちゃんの緊張を煽らないといいけど…」
「何言ってんでィ山崎のアホチン。聞こえた方がいいんでィ、こいつァ好都合だ」
「……え?」

審判の「前へ!」って号令で、一歩試験官の方に歩み寄った。
試験官デカッ!身長差ハンパねー、2mくらいあるんちゃうこの人?
半分放心状態で見上げてたら、試験官は私を見て軽くプッて笑った。
……は、笑った?今こいつ私見て笑った?

「いくら相手がチビガキだからって、笑ったら試験官失格だよな…まぁ、でもこれで決まったな」
「周りが自分をナメてかかってるって恭が気付けば、もうこの試験は貰ったも同然でィ」
「キレてこそ、奴の本領は発揮される」
「副長、それに似たフレーズどっかで聞いた事あります」
「まっ、要は人一倍負けず嫌いって事だ!」

「始めッ!」
「!?え、ちょっ……!ひッ!?」

今笑いよったなこのブサゴリラァァアア!
上等じゃ、目に物見せてくれるわァァアア!!


   *  *


「だーはっはっは!いやーよかったよかった!」
「取り敢えずおめでとう恭ちゃん」
「……ありがとうございます…」

帰りの車に乗ってすぐ、近藤さんは豪快に笑い出した。隣にいる土方さんもさり気に笑ってたりする。
えー…試験は無事受かったんやけど…試験官に笑われてキレた私は、その場のノリに任せて試験官をボコボコに叩きのめした、らしい…
何で“らしい”かって言うと、いろんな意味でテンション上がってた私は自分ではよく覚えてへんから。総悟曰く、その時の私はさながらマヨネーズをおじゃんにされた土方さんやったとか。どんな例え?
謝りに行こうと思ったら向こうの方が土下座してきたから、大人しく引き下がって来たっていうのが事の次第。

「いやーいいもの見せてもらった!やっぱり面白い子だ恭ちゃんは!」
「幕府お抱えの剣術士をまさか瞬殺にしちまうとはね〜教えた甲斐があるってモンでィ」
「総悟、お前は帰ったら事務仕事片付けろ。今日は全部終わらせるまで見張ってるからな」
「マジですかィ」
「にしても恭ちゃん、間に合ってよかったね」
「え、何にですか?」
「最近刀狩りが頻発してるんだ。目を付けられた人はみんなコテンパンにやられてるんだって」
「…それって、間に合わんかった方が良かったのでは…?」
「何言ってやがる。今でこそ狙いは帯刀した奴だが、何時一般庶民が襲われてもおかしくねェ」
「護身術が役に立つかもしれない。まぁ、夜道を出歩かん事が一番だが、万が一の時にな」
「…そう、ですね…」

うえ、物騒。ってかそれってアレやん、エセ弁慶。何て名前やったっけ…?狙ってた刀…ほしくだき、やったっけ?アレ確か通販モンやから私は大丈夫……と信じたいなー。
何にせよ私の刀もヤバいモンには違いない。教わった事をフルに活かさなな。

「お前の刀、約束通り返すぜ」
「資格を取ったからには、刀と証明書を常に持ち歩くんだぞ」
「はい、今まで本当にお世話になりました」
「また練習に来なァ。相手してやっからよ」
「そうやってお前はサボるつもりだろうが」
「あはは、でも本当に、困った事があったら何時でも来てね」
「はい、ありがとうございます」

何度かお辞儀して私は万事屋に帰った。この1ヶ月近くで、真選組の人達と凄く仲良くなれた気がする。
総悟はいきなり後ろから覆い被さってきたりとシキンシップ激しかったけど、頻繁に練習に付き合ってくれた。
近藤さんもよく(お父さん発言しながら)面倒見てくれたし、受験費も払ってくれた。太っ腹!
土方さんも始めはぎくしゃくしてたけど、今や完全に先生ポジションや。仕草とかセリフが神田みたいでめちゃカッコええ!
山崎さんや他の隊士さん達も練習に付き合ってくれたり道具の手入れとか細かい事教えてくれた。
こんなによくしてくれたみんなの気持ちに応えるためにも、この刀を大事に使わなあかんな…。

とにかく今私が一番にすべき事は、今日までずっと応援してくれた万事屋のみんなにこの証明書を見せる事や。

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