青そら | ナノ
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▽ 2

「あ、お登勢さん?」
「おや恭。バイト帰りかい?」
「はい。お登勢さんは?」
「このカラクリジジイと話してたとこさ。いい加減店閉めなってね」
「しつけえぞババア!誰の邪魔にならねェ此処でやってやるってんだ、用が済んだんならさっさと失せろ!」

うわ平賀さん機嫌悪っ。まぁこんだけカラクリバラバラにされたら無理もないか。
因みにこの不機嫌の原因達はとっくに帰宅したらしい。どうしようかな私。
いてもあんまり必要性なさそうやしな…あーでもせめて尻拭いくらいはした方がええかな?

「気ィ使わなくていいよ恭。やったのは銀時で頼んだのは私だからね」
「あー、でも何もしないってのはちょっと気が引けるなーと…」
「何だその娘?もしかして十八郎が雇ったって言う娘か?」
「!はい、今井恭です」
「平賀源外。十八郎が散々言い触らしてやがったぞ、異世界から来た女を雇ったってな」

何言い触らしとんじゃあのクソジジイ!いや隠すつもりもなかったけどさ!
せやからか、町歩いてたら知らん爺ちゃん婆ちゃんに珍獣見るみたいな目ェ向けられるんは!
ってかみんな普通に信じたん異世界説!?土方さんとのこの差は何なん!?

「気ィ使うだ何だ言ってたな。だったらちょいと頼まれてくれや」
「はい、何でしょう?」
「腹減ってんだ。こいつでほ〇弁でも買って来てくれ」

そう言って千円札を差し出す平賀さん、リクエストはカツ丼。えらい定番な。
この河原のすぐ近くにほ〇弁があったのを思い出して、私は直ぐに買いに走った。

「…本当、気立てがいいんだか他人行儀なんだか…」


――――――――――
―――――――
―――――

カツ丼よし、お箸よし、お手拭きよし、お茶よし。よっしゃ戻ろう。
5分くらいでカツ丼弁当が出来上がった。これくらいやったらあんまり待たせんで済むな。
今日は帰ってもあんまする事ないし、他に何か出来る事ないか聞いてみよ。

「あ、ひら…――!!」

河原に近づいて平賀さんに声を掛けようとしたけど、途中で声が止まった。カラクリを背にして平賀さんが誰かと話してる。
その“誰か”は自分がよく知ってる人物。けど実際に見ると背筋が凍るような物凄い恐怖感を覚えた。
今頃真選組の屯所で土方さんが言ってるであろう台詞が頭の中で反芻する。

――攘夷浪士の中でも、最も過激で最も危険な男…――


「…高杉、晋助……」



あれから暫くその場から動けずにおったら、何時の間にか高杉は居なくなってた。
平賀さんが私を見付けて声掛けてくれんかったら、あのままずっと固まってたかもしれへん。
渡したお弁当がまだ温かかったからそう時間が経ってなかったんやろうけど、私には何時間も経ったような感じがした。
結局何もする気にならんくて、帰ってええって平賀さんの言葉に甘えて万事屋に逃げるように帰った。
今でも思い出すとゾクッとする。私あの人に会ったら即行で殺されそう…うわ余計に怖くなってきた。

「あっ、恭〜お帰りヨ〜…どうしたアルカ?」
「…ううん、何でもない。ただいま」

うん、ホンマに何でもない。チラッと見ただけや。
関わらなければ問題ない――何時か関わる事にはなるやろうけど。


   *  *


あ"あああ甘ェいい匂いがするううう食いてェェェ綿菓子かき氷チョコバナナ林檎飴ぇぇええ!くそっ、何でこんなクソジジイと機械弄りなんていなくちゃいけねーんだよ。早くしねーと糖分達が逃げちまうじゃねーか。
恭は九十九ジジイの仕事で先に行っちまうしよ〜いいな〜俺も行きてェよォ…

「平賀さん、もう祭り始まっちゃいましたよ。手伝いに来たけど、もうコレ間に合わないんじゃ…?」
「カラクリ芸を将軍に披露するのは夜からよ。夕方までにどうにかすりゃ何とかなる。今井の嬢ちゃんが大方やってくれたしな」
「え?平賀さん、恭さんの事知ってるんですか?」
「てめーらの代わりにこの3日いろいろ手伝ってくれたぜ。できた娘だな」

またあいつか…手伝うんなら俺達にも声掛けりゃいいものを。俺達だってやる時はやりますよ。なのに自分一人でできると言わんばかりに片意地張りやがって…。
もっと俺達頼れよな。あー何か最近あいつに対してこればっか思ってる気がするわー。

「しらばっくれるんじゃないわよ!」
「「「!?」」」
「アナタ、私が何も知らないと思ってんの!?コレ!Yシャツに口紅がベットリ!!もう誤魔化せないわよ!」
{御意}
「御意御意って、いっつもアナタそれじゃない!そんなんだから部下にナメられるの!」
「「「………」」」
「たまにはNOと言ってみなさいよ、この万年係長が!!」

…え?何やってんのアイツ?何昼ドラみてーなままごとやってんの?何時覚えたのあんな台詞?せめて普通のやつやれよ。大体浮気バレても御意しか言わねー旦那ってどうよ?

「あ"ーもうドメスティックバイオレンスぅぅ!!」
「ギャアアアアア!!何してんだァァァ!やめろォォォ!!」
「相手は誰よ!?さち子ね!新築祝いの時に来てた、あのブサイクな部下!」
「止めろって!何てドロドロなままごとやってんだ!!」
「アナタにとってはままごとでも、私にとっては世界の全てだった!」
「全然上手くねーんだよ!早く下ろしやがれ、終わらねェだろーがァァ!」

早くしねーと俺の糖分がァァ!!

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