青そら | ナノ
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▽ 3

ギャアアアという叫び声。
驚いて見ると、私らの目の前に巨大な触手が何本も現れた。

「…え?…何?アレ?…うそ!」
「アッハッハッ!いよいよ暑さにやられたかや?何か妙なもんが見えるろー」
「…や、正真正銘のタコ足です…」

突如現れた触手。それらは次々に乗客達を絡め取っていく。
そしてその触手は坂本さんにも…

「ほっとけほっとけ、幻覚じゃー。」
「えっ、でも…」
「!あっ!」

目の前の気持ち悪い物体を幻覚と言ってのける坂本さんも、その触手に絡め取られ空高く上がっていった。

「ほっとけほっとけ、幻覚じゃあああぁぁぁぁぁぁ――」
「坂本さぁぁぁん!!」

新八が叫ぶのと同じタイミングで、あちこちから悲鳴が聞こえてきた。
乗組員や乗客達も触手の存在に気付いたらしい。

「あれは砂蟲」
「!陸奥さん…」
「この星の生態系で頂点に立つ生物。普段は静かじゃが、ガチャガチャ騒いじょったきに目を覚ましたか…」
「ちょ、アンタ!自分の上司がエラい事になってんのに、何でそんなに落ち着いてんの!?」
「勝手な事ばかりしちょるからこんな事になるんじゃ。砂蟲よォ!そのもじゃもじゃやっちゃって〜!特に股間を重点的に」

女の子らしからぬ発言を平然とする陸奥さん。助けるつもりはないらしい。
けど坂本さんもただただ捕まったままな訳じゃない。懐から銃を取り出して次々触手を撃ち落した。
解放された人達はすぐに船内に逃げ込んでいく。けど坂本さん自身はそのままや。
そうこうしてると大きな音と共に船が揺れた。砂地が動き、中から砂蟲の巨大な本体が現れる。

「でっ、出たあああああ!」

砂蟲は残っている触手で船を雁字搦めにした。
突然船がぐらりと傾いたかと思うと、そのまま地中に潜り始めている。

「奴め!船ごと地中に引きずり込むつもりじゃ!」
「えええええ!?」
「大砲じゃ!大砲ばお見舞いしてやれー!」
「!そんな事したら、坂本さんまで…!」
「ワシに構わんでええんじゃー!」
「で、でも坂本さ「砲撃よーォい!!」!?」

陸奥の一言で他の乗組員も動き出した。
「砲撃用意!」と声を掛け合い、大砲の準備をし始める。

「ちょ、アンタ!坂本さんはどうするんですか!?隊長でしょ!?」
「…『大義を失うな』」
「!」
「奴一人のために乗客全てを危機に晒す訳にはいかん。今やるべきは乗客の命を救う事じゃ。『大義を失うな』とは奴の口癖…奴は攘夷戦争も仲間も放っぽいて宇宙に行った男じゃ。何でほがな事ができたと思う?
 ――大義のためよ。目先の争いよりももっとずっと先を見据えて、国のためにできゆう事を考えて決断ばしたんじゃ。そんな奴に惹かれてワシらは集まった。じゃから奴の生き方に反するようなマネ、ワシらはできん!」

大砲の先がゆっくりと砂蟲に向けられ、「砲撃準備よし!」という声が聞こえる。
陸奥は自分の行った言葉通り迷わず「撃て」と大声で叫ぶ。
大砲は腹の底に響くような大きな音を出して、砂蟲に赤い光線を放った。

「それに奴はこがな事で死ぬ男ではないきに」
「いやいやいや!もしそうだとしても死ぬでしょアレは!」
「!おい、あれ見ろ!」
「砂蟲が土の中に逃げるぞー!」

強い衝撃を受けた砂蟲は、船から触手を放して再び地中に潜り始めた。しかし坂本は未だ捕らわれたままだ。

「いかん、坂本さんがー!」
「潜り込む前に仕留めるんじゃー!」
「坂本さんば救えー!」

乗組員が口々にそう叫び、再び砂蟲に大砲の照準を合わせる。
すると、何かがひらりと飛んで来て大砲の上に乗った。
ガキィイイイン!という鋭い音が大砲に響く。

「こんなモンぶち込むから、奴さんビビッて潜っちまうんだろーが。大義を通す前に、マナーを通せマナーを」
「銀さん!」
「…あれほんまに木刀?何で大砲を貫通できるん?」
「っつかおまんが言うなや」
「辰馬ァ!てめー星を掬うとかでけえ事吐いてたくせに、これで終わりか?昔からてめえは口だけだ。俺を見ろ俺を!」
「!?」

砂に埋もれてもう姿の見えない坂本に向かって銀時は叫んだ。
漫画で展開を知っているとはいえ、その行動には恭もドキッとする。
銀時は勢いよく大砲を蹴ったかと思うと、そのまま砂の中に飛び込んでいった。


「てめーで考えた通り、生きてっぞぉおおお!!」

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