青そら | ナノ
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「…一面ババアの肌みたいな星に不時着しやがって…てめーが舵折りやがった所為だぞ」
「昔の事なんぞ忘れたぜお。男は前だけ見て生きてくもんろ〜」
「惚けんな、この毛玉ァ!!」

もう実況中継する気にもなれへん。勝手にやってろアホ共。
何で太陽が2個もあんねん、いらんわ2個も。腹立つわーこの星イライラする。元々日光に弱い神楽は、ある筈のない川へと歩いてってる。慌てて新八は止めてるけど、今私にはそんな気力はない。
銀さんと坂本さんにもどうも幻覚が見えてるみたい。さっきから結野アナやらお良ちゃんやら…もう別にあんたらはそっちの世界から帰って来んでええわ。寧ろ行ってらっしゃいさよーなら。あれ、私キャラ変わってる?いやいや元々こんなんやから私は。周りにこのキャラ出してないだけやから。
あれ?ってゆーか私もまた視界が揺らぎ始めた。あージェリーさんの声が聞こえる…。
近くに新八がおるからオタクっぽいとこ見られたくないんやけど…なんかもう、どーでも良くなってきた……。

「…って恭さんんんん!?また旅立とうとしてますううう!?しっかりして下さい、そっちに行っても幸せは待ってませんよ!待つのは正真正銘の天国ですよ!!」
「…ジョニー、私このホームでみんなといれて幸せやで。せやからそんな心配せんとって…」
「誰がジョニーかァァァ!物凄く幸せそう且つ切ない幻覚だなぁオイ!…って、あああ!もうダメだ!誰も信用できねー!お終いだァァ!!」

最早正気の人間が一人もいない事が分かって、新八が頭を抱え込んだ時…――

「あっ!何だアレ!」

―ゴゴゴゴゴ…

「船だァ!!」
「救援が来たァァ!」
「助かったのよぉぉ!」

空から聞こえる大きな機械音。
大きな船が三機、砂地に降り立った。ホッと一安心する新八。
けど一人正気やった彼も、勿論私も、遠くの方で砂の中から現れ蠢いている触手には気付かんかった。


   *  *


「…い…おい、おまん大丈夫がか?」
「…うぅ"…あれ、ここは?」
「気ぃ付いたか。ここはワシらの船じゃ」

2度目のDグレ界への旅。今度は教団の食堂で、私は科学班のみんなと食事をしてた。
けどそこでアレンと神田の喧嘩に巻き込まれ、みたらし団子と蕎麦をモロ顔面に食らったところで目が覚めた。
けど「もう少しで団子と蕎麦で窒息するとこでした」なんて目の前の女性には言えん。気絶してた私を介抱してくれてたらしい、長く薄い茶髪のその人に私は見覚えがあった。

「今回はワシらんところの頭が迷惑かけたぜお。ワシはこの船の副官の陸奥じゃ」
「陸奥、さん…今井恭です。こちらこそ助けて頂いてありがとうございます。」
「おお恭ちゃんっ!気ぃ付いたがか、よかったぜお。何かアレーンとかソバーとか魘されちょったき、心配しちょったぜお」
「え"」
「おまんがそうさせた様なもんじゃ」

私そんな事言うてたんですか坂本さん!ヤバ恥ずかしっ!
どう誤魔化そうか困ったけど、新八が水を持って来てくれたお陰で何も言わずに済んだ。

「坂本さん、これ…?」
「おお、快援隊ちゅーてな、ワシの私設艦隊みたいなもんじゃ」

おお〜漫画で見たまんまや。でも生で見たらやっぱり迫力があるわぁ。海を行く坂本竜馬も好きやけど、宇宙を行く坂本辰馬も好きやな。
私多分、幕末の頃に一番頭が良くて時代の最先端を行ってた人は坂本竜馬やと思うな。刀を握るだけじゃなくて、自国と他国両方の利益を考えた人やから。
まあこっちの坂本さんはアホっぽい一面の方が強いけど…。

「―人が集まって来る男っちゅーんは、何か持ってるもんぜお。おんしらも、奴の中の何かに惹かれて慕っとるんじゃなかか?」
「…うーん、何だかよく分からないです」
「私も惹かれたと言うより、拾ってもらったって感じです。こんな私に凄くよくしてくれるし…」
「そがかぁ。んが恭ちゃん、奴はそげに大層な事は考えちょらんきに。おんしが楽しそうにしちょる。それが奴の願ちょる事じゃ」
「……そうですかねぇ…」
「アッハッハッハッ!謙虚じゃのぉ恭ちゃんはー。要はおんしのしたか事をすればええんじゃ!んでもって、ありんままのおんしを見せちゃれば、金時もきっと喜ぶきにー」

ありのまま…そう言えば私、知らん内に銀さん達に壁を作ってる気がする。
私は単純に距離を置いて丁寧に接しようとしてるだけのつもりやけど…。
銀さん達はそんなん望んでへんやろうけど、銀さん達との関係は大切にしたい。
だから、“ありのまま”を見せるのは躊躇ってしまうんや…。

「ありのまま、か…ってゆーか坂本さん、あの人は金時じゃ」

ないですよ。と言おうとしたけど、その言葉は声に出る事はなかった。

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