きっかけ大作戦04
「どうしよう、お昼ご飯」
セルフィは手に持っている、黄色い弁当袋にプリントされているヒヨコを眺めながら呟いた。すると…
「…セルフィ」
低い声がセルフィを呼んだ。振り返れば、そこにはヴィンセントが居た。
「ヴィンセント…」
「…どうしたのだ?弁当袋を持って」
「それがね〜」
セルフィは
事の説明をヴィンセントに話した。
「…成る程、ユフィとリュックが」
「そうなん。そんでこのお昼ご飯どうしようか考えてんの」
「…そうか」
セルフィは
俯いて一つ溜息を吐くと、続けた。
「自分で食べようかなって思ったんやけど、どうにも気が変わっちゃってね」
「…誰かにあげるとうい選択肢は?」
「それは…」と言い掛けて、セルフィはばっと顔を上げて、ヴィンセントを見た。
「そういえば、ヴィンセントは今日、アービンとどっか行くんだよね?」
「…ああ」
ここで、ヴィンセントは内心、任務が達成することを確信した。
「この弁当、
アービンに渡してくれない?」
「私は昼飯を買いにいかなければならないのでセルフィが直接渡してきてくれ」
即答してしまった為、何か疑われるのではないと、一瞬ヒヤヒヤしたが、セルフィは何の疑問も持たず、「あー、そう?」と言ってアーヴァインの所在を尋ねた。
「じゃあ、
アービンがどこにいるかわかる?」
「…」
ヴィンセントはスッと校門の方を指した。
そこには、アーヴァインがこちらに背を向けるようにして立っていた。
セルフィはパッと顔を明るくして、「ありがと!」と言い残してアーヴァインの所に走り寄って行った。
ザザッ
「…こちらヴィンセント。アーヴァイン、セルフィが行ったぞ」
『了解』
そして、プツッと切れる。
ヴィンセントはフッと笑うと「がんばれよ」とらしくない言葉を残し、クラウドたちが居る所に向かった。
「アービン!」
セルフィが駆け寄りながら声をかけると、アーヴァインは嬉しそうに振りむいた。
「何だい?セフィ〜?」
「あのさ、
アービンはもうお昼ご飯買った?」
「まだだよ〜」
(セフィから
お弁当もらわなきゃいけないもん)
「よかった〜」
セルフィはホッと一息つくと、「はい」と言って弁当袋を渡した。
「これは?」
アーヴァインは判ってるくせに、尋ねた。
「お昼ご飯。
ちょっと訳あっていらなくなったんだ」
「そっか。…貰ってもいいの?」
「う〜ん、アービンがいいんなら」
この時、アーヴァインは満面の笑みを浮かべて「ありがと〜!!」と言ってセルフィから弁当袋を受け取った。
ちなみに、
クラウドたちに状況を教える為にトランシーバーの電源をONにしていた。
クラウドたちは任務が達成したのを聞き届けて、トランシーバーを切った。
ヴィンセントは速度を遅めにしてアーヴァインの所に向かい、クラウドとスコールは手を叩き合った。
―――その後の会話を知らずに。
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