暗澹の部屋




次の部屋は今までとは違った

空気が淀んでいる

窓は小さく みえる景色は暗い

気のせいか壁自体も

まるで

雨水が長い時間をかけて

芯まで染み込んでいるかのような

気味の悪い冷たさに満ちていた。


室温は適温で快適な筈なのに

身体が一気に冷えたような気がして

ユフィは肩を抱いてふるりと震えた

暗い部屋は見通しが悪く

ともすればヴィンセントの後ろ姿自体

見失ってしまいそうだ


ガタン!!


「……っ」

悲鳴を上げそうになったのを
咄嗟に口元を覆って耐えた。

音の出どころを見ると

部屋の隅に…何かいる

じっとこちらを見つめてくる

まるで死人のような瞳

(動かなきゃ)

(はやくヴィンセントを……)

ヴィンセントを


…追いかけたいのに…


体は張り付いたように動かない。

そうこうしているうちに

僅かに見えていた

赤いマントの背中も

闇にかき消えてしまった


「…あ……」


途端に密度を増す暗闇

外の雨音が煩くなった

温度を下げる冷気も増して

身体の震えが…とまらない


ずる…


ずるずるず…る

そんな嫌な音を立てて

ここの住人は近づいてくる

ゆっくりと それ は手を伸ばしてきた


「…ひっ…」


その手に触れるより速く

肩を大きく揺さぶられて

ユフィはさらに硬直する



「そこまでだ」



【彼の肩を抱く力は強かった】

- 17 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -