フリーダムヤクヤ

魔界って、なんなんじゃろなー。
なんてことを、魔界の住人の俺ぁよく思う。

この魔界は、いつの間にか現れた魔王なんて奴に支配されておる。

そして、天界を真似とるのか、対抗しているのかは知らないが、階級なんて制度を勝手に作りおって…
魔王に従わない魔族は下魔だとか、野良魔族なんて呼ばれるんじゃし。
世の中腐っとるのぉ…

先日も、

「貴様ら、野良魔族だな?早く魔王様の指揮下に入りやがれ」

なんて、中級魔族とか呼ばれる魔王の部下とやら数名が、俺の前に現れた。
なんとか戦える奴等と協力して退けたが……

ここには、女子供も居る。
だのに、魔王の部下は、魔王に従わない魔族を仲間に引き入れるか、排除しようとする…

本当に、腐った世の中じゃ……

そういえば、遠い遠い昔にもこんなことがあったのぉ。

「ヤクヤおじさん!」

そう、俺の名前を呼んで、よく後ろにくっついて来た小さな女の子。

あーんまし、詳しいことはわからなかったが、天界から落とされ、そのまま人間界から魔界に落っこちて来た、天使の女の子、ハルミナ。

あの子は今、元気にしとるんじゃろうか?

あの時も、魔王の部下のせいで、安否のわからぬまま悲惨な別れ方になってしまったからのぅ……
じゃが、きっと、あの子も生きているじゃろう。
何処かの地で……

「ヤクヤさん!まーた、魔王の部下とやらがそこら辺、徘徊してますぜ!」

そう言ったのは、まだ年若い魔族の青年トール。

俺達は魔王とか部下とか、そんなんに興味ない。
ただ、静かに暮らしたいだけじゃ。

だから、本来は戦いなんて好まないが、俺の周りには戦いが付き物だ。
そうして、いつの間にか、魔王下に入りたくない奴らが、俺の周りに集まっていた。

この世の中、魔王に逆らって戦うなんてのは、難しいものじゃから。

じゃから、戦える俺は、自由に生きたいと願う魔族達を守らなきゃならない。

きっと、自由に暮らせる地が、この広い広い魔界の何処かにあると信じて…

俺達は、魔王の作った階級なんか知ったこっちゃない。

俺ぁ、俺達は、下魔だとか野良魔族なんかじゃない。

若い連中は自らをこう名乗ろうと決めた。

人間界の言葉で自由を表す言葉、【フリーダム】と。

最近の若いもんは、カッコつけた名称が好きなのかねぇ?

じゃが、俺も、階級よりはよっぽど良い、と思う。

よし気に入った。

だから、俺ぁ、こう名乗ってるんじゃ。

俺ぁ、フリーダムヤクヤじゃ、と。
何にも屈しない、自由な魔族じゃ!


しかし、俺が名乗ったら若い連中は大笑いするのじゃがなー…


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