上魔ナエラ
今日も今日とて、新しい仲間が次々に増えて行く。
まあ、中魔って言う、捨て駒みたいなんだけどね。
その中で、ボクらみたいな強ーい上魔だとか、ネヴェルちゃんみたいな悪魔みたいなのとか、はたまた魔王さまとかみたいな、そんな強い連中が仲間になってくれたらいいけど。
て言うか、今日はちょっと面白いことがあったみたい。
弱い魔族の群れかと思いきや、ボクら上魔くらいの力を持った魔族と、ボクらの部下、中魔がぶつかってボロ負けして帰って来たみたい。
魔王さまに従わない野良魔族の中に、そんなのが居るなんて、ね。
ちょっと気になるな。
まあ、中魔なんて、ボクらにとっては捨て駒だし。
本当に魔王さまに忠誠を誓ってる奴なんてなかなか居ないだろうし。
ほとんどが力に怯えて従ってるだけだろうし。
ああ、そうそう。
ボクは上魔のナエラ。
一応、上魔の中では一番の実力者とか見られてるけど、別にボクは肩書きだとか、力争いに興味ないんだよね。
魔王さまの支配下に入ったのもネヴェルちゃん目当てだし!
それに、気に食わないあだ名みたいなのもつけられてるしー。
皆、こーんなに可愛い女の子のボクをなんだと思ってるんだろうね?
「あーあ。今日はネヴェルちゃん忙しそうだし、つまんないなー」
ネヴェルちゃんはさっき言った、上魔くらいの力を持つ野良魔族に負けて帰って来た中魔達を事情聴取してるらしい。
「あれ?」
と思いきや。
ボクはネヴェルちゃんの姿を発見した。
「ネヴェルちゃーん。事情聴取は終わったの?」
そう聞けば、振り向いたネヴェルちゃんの姿にボクは笑う。
「あはは。物好きだよね、ネヴェルちゃんも」
「何が言いたい」
「それ、誰の血?ネヴェルちゃんの……じゃないよね?」
ネヴェルちゃんの服にべっとりとこびりついている血。
ボクはそれがなんなのかわかったけど、意地悪そうに聞いてみる。
そんなボクを見て、ネヴェルちゃんは「フン」と言い、
「わかってるんだろ。なら、わかってることを口に出させるなよ」
「えー?ボク、バカだからさぁ、間違ってるかもしれないでしょ?」
そんなボクをネヴェルちゃんは鼻で笑い、
「お前がバカだったら、ここに居る他の連中は何と称せばいいんだろうな?」
「あは、ボクのこと買い被りすぎだよ、ネヴェルちゃん。嬉しいけど」
「お前なら、俺と同じ、悪魔の階級を名乗れる実力者だと俺は思ってるがな」
ボクはそれににっこりと笑い、
「興味ないなー」
と言った。
悪魔の肩書きは、ネヴェルちゃんだけでいい。
魔王さまの一番の部下は、ネヴェルちゃんだけでいい。
ボクは上魔のままで、ネヴェルちゃんの部下でいい。
そう。
魔王さまとネヴェルちゃんと同じ土台に立つような奴なんてこの世には必要ない。
ボクはそれぐらい、魔王さまとネヴェルちゃんを敬愛してるんだからね。
魔界では力こそが全て、支配こそが全て。
だから、ネヴェルちゃんの服にべっとりとこびりついた、負け犬の中魔の血を見て、ボクはますますネヴェルちゃんが愛しくなる。