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あっさり侵入出来た上に、この弟の無防備な姿はなんだ。誘っているのか。



→ここの警備はどうなってる






移動用魔法陣から出てすぐに魔法障壁を部屋全体にかけるよう魔物に命じた。弟との時間を誰にも邪魔されたくはない。
魔物を退室させた後で部屋を見渡す。カーテンをひかれているがゆえに、薄暗くなっている部屋のベッドの上で弟が寝ている。ベッドとは反対側に位置する机の上にはこの辺りの地形や特徴が描かれた地図が放置され、弟が書いたであろうメモや策の参考にしているのか無数の本が周囲に散らばっている。弟の組み立てた策に興味はあるが、それよりも先に本人の顔がみたくて足早にベッドに近づく。上着をベッドヘッドに引っ掛け、ぐっすり眠るシーザーの顔を上からゆっくり眺める。ふわふわとあちらこちらに飛び散る赤毛、昔と変わらないそのあどけない寝顔に自然と笑みが零れる。昔は自分を慕ってくれていた可愛い弟。周囲の自分達兄弟を比較する目と軍略思想の相違とよって徐々に劣等感と対抗心に変わっていってしまった。ここに来たのは勿論シーザーに会うためであり、危険は承知だ。それにいま会ったところで敵同士の立場なのだから他愛のない話をすることすらも困難だろうということは容易にわかる。だが、今まで何年もこれに会うのを必死の思いで辛抱していたのに、目の前に自ら現れたとなれば我慢の限界だった。何年かの間で実の弟に抱くにしては歪なこの感情も多少は薄れたかと思っていたのに、薄れるどころか更に執着してしまうとは我ながら呆れてしまう。それにしても、確か今は正午を少し過ぎた辺りだと思うのだが、これは未だに怠惰な生活を送っているようだ。軍師として如何なものか。
まぁ、わざわざ敵地にまで弟に会いに来る自分も人のことをいえた義理ではない。

「シーザー」

声をかける。このまま寝顔をみているだけでも構わないが、どうせなら声がききたい。それが自分を罵る言葉だけだとしても。ほんの少しでも会話が出来ればそれで満足して帰ろう。頭に手をやり、くしゃりと自分のものよりワントーン明るい赤毛をなでる。

「シーザー…」
「ん…」

弟が身じろぐ。起きたかと思い再度声をかけようとしたところで重そうな目蓋が僅かにあがる。

「アル…」

昔の敬称で呼ぶその声、そして。
弟が、ふわりと笑った。

「…………」

絶句。
いま何が起きた。
いや、わかっている、またすぐに目を閉じた弟をみる限り寝ぼけて昔の夢でもみたのだろう。わかっているがこれは…あまりにも…。


気がついた時には目を見開いてすっかり覚醒した弟が自分の下にいた。

「なんで」
「兄が弟に会いに来たらいけないのか。」

阿呆みたいな返答しか口から出てこなかった。なお言い募ろうとする弟にさらに説明を付け加える。

「移動には魔物の空間移動魔法を使っている。姿はみられていないから安心しろ。それに日暮れ前に戻れれば全く問題ない。」
「そういう問題じゃねェだろッ!」

まず、俺がここにいること自体がどうかしているといいたいのだろう。なるほど、その通りだ。

「とりあえずそこ退けよ、話はそれからだ。」

頭を抑えつつ起き上がろうとする弟をベッドに倒す。

「いってぇな…お前さっきから何がしたいんだよ。」

なにがしたい?…初めはただ会いに来ただけだった。次に声が聴きたくなった。それで終わるはずだったのに、あまりにも可愛い顔をするから。

「なにをしたいと思う?」
「!!」

口づける。思い描いていた通りの柔らかさに甘く痺れるような感覚。

「んんんーッッ!」

状況をやっと理解したのか暴れるが、離してやるつもりは毛頭ない。

「…ッ、ん、ふ………はっ」

口内を貪り、味わう。歯列をなぞり舌を絡める。弟の舌が引っ込もうとするので、吸い上げ、抵抗が少なくなってきたところで離してやる。口の端から収まりきらなかった唾液を垂らし呆けた顔をしてこちらを見るそれ。長い口づけで唇は色づき、白い頬を上気させ、よほど苦しかったのか自分と同じ翠の瞳を潤ませて息を荒く吐いている。…途中でやめるという選択肢は霧散した。

「ちょ、なにしてんだッ」

服が邪魔だと思い、手を中に忍ばせるとすかさず制止するために手首を掴まれ、同時に抗議の声が下からあがる。

「今からお前を抱く。」
「えっ、今なんて」
「今から、お前を抱く。」

何をするのか隠す必要がないので聞こえていなかったのか問い返す弟に二度同じことを説明してやる。…やはり服が邪魔だな。

「えっ、ちょっ、ま、待て待て待て待て!待てって!」
「まだ何かあるのか?」

再び服を剥がしにかかったところで慌てて手を止めにかかる弟に少しムッとする。慌てるその様子も愛しくはあるが、どうせなら可愛く啼く姿がみたい。

「あるに決まってる!お前、おかしいだろ色々と!」
「何がおかしい?」

おかしいのは重々承知だが、聞き返さずにはいられない。

「俺、お前の弟だよな…?」

この年で呆けたのか?

「そのはずだ。」
「男の趣味でもあるのか?」

失礼な奴だ。

「そんなものはない。」
「なんで俺なんだ。」
「お前が好きだからだが?」

なんて当たり前なことを聞いてくるのかこの弟は。好きでもない奴を誰が好んで抱くものか。

「一億歩譲ってそれらに目を瞑ったとして、まずこういうことは本人の承諾を得るだろ普通っ!」
「聞いたらお前は快く承諾してくれるのか?」
「するわけねーだろっ!!」

想定の範囲内の反応だ。

「だろうな。だが安心しろ、すぐに承諾したくなるようにしてやる。」

実践経験は相手が途切れたことがないので人並み以上にはあるはずだ。男の経験はないが、知識としては持っているし、なにより自身は気がついていないようだが、先ほどからみているとかなり感度もいいようだ。容易に快感へもっていく事も出来るだろう。

「くっそ離せよ変態眉毛っ!叫ぶぞっ」
「この部屋には魔法障壁を張っておいた、叫んでも助けは来ないぞ。」

弟の顔が引きつる。どうやらまだ助けが来ると踏んでいたのか、勢いが急速になくなっていく。

「あ、アルベルト、」

制止するために発したであろうそれを無視してシャツで腕を一纏めにする。

「…いい子にしていろシーザー、そうすれば痛い思いをしなくて済む。」

怯えが入った声に加虐心がわき、耳元で囁いてから耳を舐めてやった。




「君、アルベルトだよね?」

ここからが本番、というところで邪魔が入った。驚いて振り向くと、それはハルモニアの神官将殿。

「…なぜササライ様がこちらに?」

知らず顔が剣呑なものになる。

「ああ、近くを通りがかってね。なんだか不自然な魔力の揺らぎを感じたから来てみたんだ。そしたら君が弟くんに悪戯してるんだもん、びっくりしたよ。」

クスクスと笑い、ついで現れたのは冷笑。

「君の性癖はどうでもいいんだけどさ、シーザー君はこちらの軍師だ、離してくれるかな?」

口調こそ疑問形式だが、否と答えさせる気はないようだ。真の紋章がないからといって侮ることは出来ない。彼の魔力は相当なものだし、現に彼がここにいるということは魔法障壁は破られたらしい。破られた以上、ここに長くいることは得策ではないだろう。移動用魔物を呼び寄せる。

「仕方ありませんね」

肩を竦めてみせ、弟から離れる。次にこんな機会に巡りあえるのはいつになるのか。否、知略を尽くしてでも次こそは弟を手に入れようと誓う。

「…ではまたな。」
「二度とくるなっ!」

罵声すら心地良いと感じる自分は末期なのだろうと思う。











■―――――――――――
「警備についてもの申す」兄sideでした。
Q.魔法障壁って?A.人の気配とか空間を認識されないように張る魔法的ななにか。
Q.なぜ兄はシーザーの部屋をしっているの?A.たぶん連合軍内に密偵がいるんだと思います。
Q.この兄は無謀な上に頭があまり良くないようですが?A.私のおつむの限界

このあと自軍のテントに戻った兄は悔しさで内心もだもだするに違いない。そして、可愛いシーザーを思い出してまた別の意味でもだもだするに違いない。弟大好き過ぎる兄が好きです。原作は違うだろうけど(そりゃそうだ


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