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※ボカロ曲"聖夜、愛犬がビデオデッキに詰まる"にリスペクトされた、なんかよくわかんない駄文。本編のネタバレも含むのでなんでも許せる人向け。














奇っ怪な音が部屋から聞こえた。
…なんだ…?


→誕生日、親友がビデオデッキに詰まる




「はぁ、疲れた…」

今日はオレの誕生会が開かれた。多くの貴族がナイトレイ家に訪れ、ゆえに主役であるオレはその対応をしなければならなかった。
誕生会、とはいえその実質は四大公爵家であるナイトレイ家に取り入ろうとする輩が集まってくる…まぁ、オレにとってみれば胸くそ悪いことこの上ない会だ。
親族からの贈り物や言葉だけが唯一、心のこもったものとして胸に届いた。

(あいつも、来れば良かったのに)

あいつとは、つい最近オレの従者になったぼさぼさ黒髪のやつのことを指す。
名前はリーオ。
ムカつく奴だがピアノの腕は相当で、本の虫であるためなのかは分からないか知識が並の奴よりもある、その上頭の回転もいい。なにより、奴はオレの唯一の………

…まぁ何はともあれ、リーオは今ここにいない。フィアナの家に戻っているのだ。オレの家族と折り合いが悪いこともあるが、なにか思うところがあるのだそうだ。主人の誕生日にいなくなるとは一体全体どういう了見なのか、帰ってきたら問いただしてやる。

そう思いながら自室の扉に手をかけた瞬間、中から音がしたのだった。

腰に帯びた剣に手を伸ばす。
ナイトレイ家は四大公爵家の中でも、特に敵が多い家としても名高い。故に、屋敷の周りにも厳重に警備をつけているはずなのだが…侵入者か?

物音は最初の奇怪なあの音以降聞こえなくなった。剣を抜き慎重に、かつ素早く扉を開いた。そして…

現れた光景にオレは固まった。


「なっ…なんでだぁああああああッ!!!!!」

そこには巨大な黒い箱から飛び出している、親友の顔があった。

なんだ、ってか何してるんだコイツは。っていうか驚きすぎて大切な剣を床に叩きつけてしまった。ナイトレイ家の証である大切な剣なのにどうしてくれる。

「エリオット…」

腰から下半分を黒い箱に突っ込んだままで、そう弱々しく呟いた従者はいつも隠している目を晒している。なんでそんな悲しそうな目でオレをみる。なにかあったのかと尋ねたい、いや、なにかというか今現在どうしてそうなったのか尋問したい。なにしてんだ本当に。

「お前、なにしてんだ。家に帰ってたんじゃなかったのか、ってかその黒い箱はなんだ」

リーオは答えない。答える代わりに両手で自身の顔を覆った。

「…僕の、僕のせいだ、僕がこんな奴らの"これが時間を渡るためのバスカヴィルの秘密兵器、ビデオデッキだよっ!過去に渡る時には巻き戻しボタンを押してね!アハハウフフ☆"なんていう口車にのって、ボタンなんて押さなければまたこうして君の前に現れなくても済んだのに…僕が、僕が悪いんだ、全部僕が…っ」

一息に説明口調で言い終えたリーオはわっと泣き始めた。
訳が分からない。なにがどうした、どうして泣いてる、ビデオデッキ、巻き戻しボタンってなんだ。とりあえず、お前は何をしてるんだ。

「エリオット!何があったの!?」

呆然としているところにヴァネッサがやってきた。どうやらオレの叫び声を聞き、駆けつけたようだ。
そしてリーオを見るなり目をむいた。

「!!??これはどういうことなのエリオット!!!」

「いや、どういうことって、オレも、わかんねぇ…」

正直な感想が口から滑りでた。どこから何を突っ込んだらいいのかもわからない。取りあえず、オレが突っ込まなくてもリーオが下半身を黒い箱に突っ込んだままということだけはわかる。

「あなたの従者は施設に戻ると言っていたのではないのっ?なんでこんなところで、こんなことになっているのよ!」

「だから!オレにもわからないって言ってるだろッ!っていうか落ち着けヴァネッサ!落ち着け自分!!」

そうだ、こういうときにはまず冷静になることが大事だ、きっとそうだ。息を吸って…

「だから平民の従者なんて私は反対したのよ!こんなわけのわからないことばかりして…あなたに何を吹き込むかわかったもんじゃないわ!」

「なっ…今この状況で平民かどうかは関係ないだろ!」

そうだ、出生はこの際関係ないはずだ、行動については否定できなくても。

「いいえ関係あるわよ!貴方に悪い影響ばかり与えて…!アレの代わりは私がすぐ見つけてあげるから今すぐ解雇するのよ!」

「勝手に決めつけるな!リーオは…!」

「いいんだ、エリオット」

不意にそれまで泣いていたリーオが、泣くのをやめ、口を開いた。

「お姉様の言うとおりだよ、僕は君に悪い影響ばかり与えてしまう…こんな、馬鹿な口車にも乗せられてしまうしね……」

手を顔から離したリーオの目は深い悲しみを湛え沈んでいた。そして、黒い箱についた四角の出っ張りに手を伸ばした。書かれた記号は>>。頬に涙が伝ったままでリーオがオレを真っ直ぐに見据えた。

「僕は、やり直してみせる。君の、幸せな未来を守る為だったら、たとえ君がそう願わなくたって、やり遂げてみせる。だから…」

弱々しく微笑んだリーオに、我知らず手を伸ばす。

「どうか幸せになって、僕のたった一人の…」

伸ばした手は何にも触れることなく空をきった。そこには黒い箱も、リーオも、跡形もなく、ただ自身の暗い部屋の床があるばかりだった。

「エリオット、今のは…」

呟く姉の声すら耳に入らない。ただ胸の内を占めるのは一つのことだけ。
膝が自然と床につき、オレは拳を地面に叩きつけた。


「…突っ込みきれねぇよ!」











■――――――――――――
訳わからないものが書きたいと思ったらこうなったよ。アヴィスに入ってからのバスカヴィルの時を渡る方法がビデオデッキ…な訳がない。微塵もない。ビデオ最近みないよね、時代はBlu-ray。


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