飼い馴らした諦め

 飼い始めたら飼い馴らして、その内それに心は殺されるのだろう。
 諦めなんて飼ってはいけないというけれど、それじゃあどうすれば飼わなくて済むのかを教えてほしかった。
 だって最初から期待なんてしなければ傷付かなくて済むし、現実なんてそんなものだと思う事ができる。
 だから諦めを飼う事を選択する。それは一種の防衛本能みたいなものだ。
“諦めて良い事なんてあるの?”
 私のそれを知った人に言われた言葉に対し、当時の私は小さく微笑んで言葉を返さなかった。
『育ってきた環境やらで決まるんだもの、そういう環境で生きてきたと思ってよ』
 なんて言ったところで彼女は納得はしないだろうな、と思ったからだ。
 諦めを飼わなくて済む環境にいる人は諦めを飼う人の環境なんて分からない、それは逆もまた然りだ。
 つまりはそういう事、結局そういう分かり合えない部分で問答したって時間と感情の無駄になる。
 乱暴な考えになっているし相手との理解を深める気がないと思われそうだけど、でも私はそういう人間なのだ。

 諦めを飼っていてもいつかそれを捨てようと戦っている人だっているだろう。
 けれどもそれは戦える気力があるからだとか、つい考えてしまって――ああ自分は諦めに浸食されていると思ってしまう。
 諦めの怖さを理解しつつも、そこに浸ってしまうのだ。
 けれどもそれは悲劇の存在を気取りたい訳じゃない。只単にそれに慣れてしまって、慣れた事により直ぐには変えられなくなった。
「ああ、嫌だなぁ」
 そう言葉にしたところで、そして抜け出したいくせに変えようとしないのだ。



2018.2.17
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