雨夜

 昨年の今頃はさっさと梅雨が明けて馬鹿みたいに暑かった気がするけれど、今年は未だに梅雨が明けずに嫌な感じがする。そして曇りか雨ばかりでうんざりしているからか何事もやる気が起きない上に他人の気配やらが酷く気持ち悪く感じる。
 元々心を許していない相手の無遠慮さが嫌いだというのに梅雨の時期でそれが倍増しているもんだから、ああ自分という生き物は我儘なもんだなぁと感じるけれども誰だって我儘な面はあるもんだしなと考える。

「他人を嫌だって感じる割にはオレに触られるのは嫌じゃないんだよなぁ、アンタって」
 相変わらず雨が降り続けている金曜、次の日は休みだからと別の階に住んでいる恋人はベッドの中でそう言葉にする。
「そりゃあ恋人は別なんじゃないかなぁ、心を許しているし」
 暗闇に目が慣れた頃、腕枕をしてくれている彼に視線を向ければ「まー、それは嬉しい事だけど」なんて言いながら彼は私の額にキスをする。
「しっかし同性でも不必要に触ってくるって、面倒くさい職場だな」
「面倒くさいねぇ、かと言って嫌悪を露わにしたら更に面倒臭い。そういうノリを受け入れなきゃいけないなら、その分も給料に込みにしてほしい」
「そういう問題?」
「そういう問題でもないけどお金が手っ取り早くない? 働いてる訳だし」
「プライベートなら止めてくれって言えるし会社を辞めるんなら良いけど、そうじゃねぇんならそうなるか」
「そういう事。理解が早いところも好きだよ」
「そりゃあどうも」
 今度は唇に触れる程度のキスをしてくる彼にキスを返しながら雨音に耳を傾ける。しとしとでなくざあざあと遠慮なく降る雨、それに対してそろそろ梅雨が明けてほしいと思いながら髪を撫でる手に意識を戻して目を閉じた。



2019.7.19

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