夏の少年
セミの鳴き声にうんざりしながら公園の木陰にあるベンチに座って溶けかけのアイスを食べる。
母さんは夏季補講から帰ったらエアコンを点けて良いわよ、なんて言っていたけど誰もいない家に帰るのは少し億劫だった。
家に独りが嫌とかそういうんじゃなくて、なんとなく帰りたくない気分みたいなもんだ。
小遣いはあるけどゲーセンに行く気分でもないし、そもそも僕は友人の誘いを断ってここにいる。
友人とつるむのは嫌いじゃないけど、なんとなく独りでいたい気分だった。
家に独りは嫌なくせに外では独りになりたがる、つまりはそういう事なんだろう。
高校二年生、学校という組織に身を置けば嫌でもそこでの時間が多くなる。
バイトとかをしていれば違うんだろうけど共働きの家にいる僕はバイトをするなら家事を手伝ってくれと言われた。
その家事――夕飯作りとか風呂掃除とかでお小遣いとは別にお金を貰っている。
共働きだからできる事なんだろうけど、僕の家のそういうのは少しだけ変わっているのかもしれない。
友人達は家事を手伝わないらしいし、お小遣いは毎月決まった額でそれ以外は特別な時(お祭りとかそういうイベント時)にしか貰わないと聞いた。
だからか僕は自分の家のそういうのは伏せている、話して何かを思われるのは嫌だからだ。
他人に対し陰で何かを言うのは何も女子だけじゃない、男子だって陰で言ったりすることだってある。
(面倒くさいよなぁ……)
どうして人は人の視線とかを気にしてしまうんだろうかと考える。
でも考えた所で答えなんてないし、どうせそれは一つの回答でしかない。
暑いとどうも余計な事を考えるし少しだけ苛々する。僕はできるだけニュートラルに、そして美しく生きたい。
でもそれを確実にするのは難しいだろう、なんせどうしようもないものなんだから。
(あーあ……)
嫌になるなぁなんて思いながら雲が流れる青空を眺めながら、いつ家に帰ろうかと考えた。
2018.7.31
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