「うん。酒も料理もうまいな」
「だろう。ジェラール」
「お口にあって何よりです」

運び込まれた料理はミラジェーンの料理を毎日食べているはずのエルザでさえ感心するほど旨かった。

「もう少し、楽しみたいが仕事の話を先にしよう」
「ああ。俺の計画としては――」

ラクサスがジェラールにエルザをモデルケースにしての売り出しの仕方、その経済効果について説明を始める。
ジェラールが真剣な顔で相槌を打っているのを見て、エルザは早くもこの打ち合わせが成功する気配を感じていた。












「ふう〜」
「今日はありがとな。エルザ」

ジェラールを見送ったラクサスはその後、一度戻ってきてくつろいているエルザに礼を言う。

「礼には及ばん。仕事として当たり前のことしかしてないからな」
「だが、ジェラールはずいぶんおまえのことを気に入っていたようだ。やはり、美女がいると違うな」
「…そうか?気に入っていたというより、むしろ――」
「何だ?」
「…いや、何でもない」

ジェラールは打ち合わせの最中も確かにチラチラと視線を送ってきた。だが、その目に宿るのは殺気にも似たような敵意のようだった。
ラクサスにも気づかれないほど、巧妙ではあったが、人の顔色を読み取ることを生業にしているエルザは敏感に感じ取ってしまった。

だが、契約成功で喜ぶラクサスに水を差すわけにもいかず、曖昧に笑って誤魔化す。

「何だよ。気になるな。まあ、それはともかく…今日の飯はミラジェーンが作ったんだよな?」
「ああ。全部一から仕込みをしていたぞ」
「…味付けを俺の好みにしてくれてた。ありがとうと言っておいてくれ」
「…っ!ああっ。わかった」
「それじゃ、またなっ!」

ミラジェーンの話をしたとたんに真っ赤になり、そのまま飛び出していくラクサスをエルザは不思議なものを見るような視線で見送る。

ぼんやりと、ラクサスはミラジェーンが芸妓だった頃、一人でミラジェーンの元へ通い詰めていたことを思い出す。そういえば、ラクサスが頻繁にこの遊郭を利用するようになったのも、ミラジェーンが料理長になってからだ。

そんなことを思いながら、エルザは今の言葉をミラジェーンに伝えるために厨房へ向かった。








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