ジークレインとエルザがクラブでルーシィたちと鉢合わせしたことを話し合っていた、まさにその時――。
そこから20mほど離れたところでは、ルーシィとレビィがジュビアと出くわしていた。
「ジュビア!」
「どうして、ここに?」
なぜここにいるのか、問いただすと、ジュビアは鬼のような形相から一変、泣きそうな表情に変わると、ぽつりぽつりと話し出す。
「最近、グレイ様が全然かまってくれなくて…」
ギルドでも隙あらば、グレイの隣にいるジュビア。
帰りもグレイについていき、可能であるなら、一緒に食事でもしたい――そう思いながら、グレイと帰ろうとするが、ここ数日「仕事があるから、ついてくんな」と言われ、ちっとも一緒にいられないのだという。
「それに、昼間はギルドにいるけれど、少しお疲れのようで、眠そうですし…」
寂しいし、グレイの身体も心配になったジュビアはグレイの後をストーキング、もとい調査をして、このクラブに夜な夜な通っていたことを突き止めた…ということである。
「ふーん、グレイがクラブ遊び…」
「意外だね〜」
ルーシィとレビィが感想を述べると、ジュビアはキッと二人を睨みつけて反論する。
「グレイ様が自主的にクラブ遊びなんてするはずがありません!きっとナツさんかガジル君に誘われたんです!」
「ちょっと!何でナツが出てくるのよ!」
「そうよ!それにガジルなんて一番クラブ遊びから縁遠いでしょ!」
「じゃあ、なんでグレイ様がここに!?」
「知らないわよ!それこそ、グレイがナツをここに誘ったんじゃないの!?」
「うん!ガジルが自分からこんなとこに来ると思えないし!」
仁義なき女の戦いが勃発しそうになったその時――。ルーシィは遠目にまたも見覚えのある顔を発見する。
「あ…」
「ん?ルーシィどうしたんですか?」
口を半開きにしたまま、一定方向を見て固まったルーシィの視線の先を見たジュビアも同じように固まる。
「二人ともどうしたの?…あっ」
三人が同じように見て固まった視線の先にいたのは、ロキだった。
いわずと知れたFT1のモテ男。そのロキがここにいるということは――。
「な〜るほど…謎はすべて解けた」
「ロキがナツたちをここに誘ったというわけね」
「絶対、許さない」
どこかで聞いたようなフレーズを口にするレビィににんまりと笑いながら、恐らく正しいであろう推測を話すルーシィ、怨嗟の言葉を吐くジュビア――3人とも目はまったく笑っていない。
かくして、戦争寸前だった女3人は手を結ぶこととなった。
☆★☆★☆
「で…まずはどうする?」
「きっちりしめとかないと同じことをしそうですね」
「あ、どっか行こうとしてる」
レビィの発言にルーシィとジュビアがロキの方を向くと、ロキはどこかへ歩き出していた。
「…つけるわよ」
ルーシィのその声に二人もこくりと頷き、歩き始める。
しばらく歩いた後、ロキが話しかけたのはグレイだった。
「やっぱりっ――」
「しっ…ちょっと落ち着いて」
「むぐっ…」
「少し黙っててね」
激昂しそうなジュビアに黙るように合図するが、抑えられそうにないと判断したレビィが口をふさぐ。
だが、その二人も次の瞬間にはジュビアと似たり寄ったりの状態となった。
「え!?ナツ!」
「ガ、ガジル!!」
二人の目に入ったのは、派手な格好をした今時の女の子たちといるナツとガジルの姿。
ガジルに至っては女の子の肩に手を回している。
見ているレビィの身体から怒りのオーラが立ち上る。
「レ、レビィちゃん…ちょっと落ち着いて」
いくらか冷静さの残っていたルーシィがレビィの怒りを抑えようとするが、そこでナツたちの方を見やったルーシィも残っていた冷静さを欠片も残さず、霧散させることとなった。
ナツが自分のそばにいる女の子の頭をぽんぽんと優しい顔で撫でたのだ。
「な、何?あの顔!?デレデレしちゃって!」
「ガジルってば、あーいう色っぽい娘が好みなの!?」
「もう、我慢できません!突撃しましょう!」
我が意を得たとばかりにジュビアが叫ぶ。
ルーシィとレビィもそれに同意。三人のもとへ突撃しようとした。
だが、そこで――。
「おい。今、突撃するのは待ってもらおうか」
ルーシィとぶつかった青い髪の男が割って入った。
「はあ?あなた一体何なの?」
「っていうか、何で知ってるんですか?」
「あれ?っていうか、やっぱり見覚えある…あっ!」
「レビィちゃんどうしたの?」
「やばい!この人評議員だ!」
「え?嘘?」
「嘘でしょう!こんな若いのに!」
「…そこまで狼狽えるのは、後ろ暗いところがあるからなのか」
「い、いえ…そんな」
「後ろ暗いなんて…ねえ」
「な、な〜んにもありませんよ」
いかにもおどおどしながら、視線を行ったり来たりさせる三人の様子は怪しいの一言に尽きる。
いぶかしげに見つめてくる男の視線から逃れようとしていると、ルーシィたちもよく知る女の声が後ろから聞こえてきた。
「うちのメンバーをあまりいじめないでもらえるか」
「いじめてなんかいねえよ。勝手にびくびくしてるだけさ」
「おまえの態度が威圧的なんだ」
「まあ、たいていの奴はおどおどびくびくするがな」
「自覚してるなら、直せ」
「悪かったよ。普段のおまえの威圧感で慣れてるかと思ってな。つい」
「いちいち気に障る謝り方しかできないのか!貴様は!」
青い髪の男と親しげ(?)に会話を始めるのは、妖精の尻尾の妖精女王――エルザに他ならなかった。
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