「あ〜、うまかった!」
「ふう〜」

おかわりを繰り返して、ようやく満足したナツとハッピーは妊婦のようになった腹をさする。

「ナツ。寝るならお風呂には入りなさいよ。汗臭いの嫌だから」

このまま、二人が横になって寝るのを危惧したルーシィが注意した。

「なんだよ。エルザみてえなこと言うな」
「ルーシィって、だんだんエルザに似てきたよね」

エルザみたい=姉か母親のようと言われた気がして、ルーシィはグッと声を詰まらせる。

「あ〜、あと今日は泊まらねえよ。これから仕事があるんだ」
「これから?」
「ああ。金持ちのおっさんからの依頼だ」
「……そう」

やや寂しそうな様子のルーシィに気づかず、ナツは窓から外に出て行った。





☆★☆★☆

そして、次の日。

「えっ…と。レビィちゃん。今何て?」
「その……実は、昨日ナツがクラブで女の子と一緒にいるところ見たんだ。なんか、飲み物持ってきてあげたり、一緒に踊ったりして、仲よさそうだったけど」

(クラブで?ナツが?女の子と?)

まずルーシィの頭に浮かんだのは、昨日のナツの発言だ。
もしかしたら、仕事に関係しているのかもしれない。そう、自分を納得させようとして、気づく。
ナツは自分の依頼相手は金持ちのおっさんだと言っていたのだ。だが、実際は女の子とクラブにいたという。
次に思ったのは見間違えではないかということだが、目撃したのが、幼少のころからの仲間であるレビィでは見間違いはありえないだろう。

「あ、あの……ルーちゃん。大丈夫?」

考え込むあまり、放心状態になったルーシィを心配したレビィが遠慮がちに声をかけてくる。
それと同時にルーシィはふと、別の疑問が湧き、それを直接ぶつけた。

「レビィちゃんは何でクラブにいたの?」

思いもよらぬ質問だったのか、レビィは真っ赤になった後、ぶつぶつと何事か小声で呟く。

「だって………って…言うから」
「え?」
「だから、ジェットとドロイががジルがクラブで女の子といるの見たって言うからっ!」

言い終わった後、レビィは真っ赤になった顔を抱えて、テーブルに突っ伏した。

「ガジルが?どういうこと?レビィちゃん」
「だから、さっきも言ったけど、そのクラブでガジルが女の子といるとこ見たんだって」
「ガジルが?本当?」

ジェットとドロイが嘘を言っているとも思えないが、ガジルがクラブで女の子といるなど、想像もできない。
レビィはのろのろと顔を上げながら力なく話す。

「うん…それで自分の目で確かめてみようと思って行ったら…」
「ナツを見たの?」

レビィがこくりとうなづく。

「もしかして、ナツとガジル二人でクラブに行ってるのかなあ?」

レビィが小さく呟いているのを聞きながら、ルーシィも同じことを考えていた。

ナツとガジルという、いかにも場違いな二人が同じクラブにいるということは、恐らくそういうことだろう。
ルーシィは少し考え込んだ後――。

「レビィちゃんっ!!」
「な、何!?」

ルーシィの剣幕に驚いたのか、若干引きつった表情で返事が返ってきた。

「あたしも連れてって!」
「え?」
「ねっ!」
「え〜と、あの…どこに?」
「そのクラブによ!」

そういうことで、ルーシィとレビィは、その夜、例のクラブへと足を踏み入れることとなった。







☆★☆★☆

そして、夜。
いつもより派手な服と派手なメイクをしたルーシィとレビィは例のクラブの前にいた。

「それじゃ…いくわよ!」
「う…うんっ!」

ルーシィもレビィも気合を入れながらクラブの扉を開く。

中は大音量の音楽が鳴り響き、明滅する光。その中で、男女が踊ったり、酒を飲んだりしていた。

「うわ〜。相変わらずすごい音…」
「目がチカチカするわね」

よくこんなところでナツを見つけられたと感心しながら、ルーシィは周りをきょろきょろ見回す。

「あ…」

小さく呟いたのはルーシィ。
レビィもそれに反応し、ルーシィの視線の先をたどり、同じように「あ…」と声を漏らす。だが、発見したのはナツでもガジルでもなく――。

「「グレイ」」

見事なまでにハモった声が聞こえるわけもなく、グレイは人波を縫ってどこかへ向かう。ルーシィとレビィは顔を見合わせ、頷いた後、グレイの後をつける。

途中、グレイの後をつけるのに懸命なあまり、他の客にぶつかった。

「あっ…すみません」

ぶつかったルーシィが慌てて謝るが、その男性はルーシィの顔を凝視する。

もしかして、知り合いかと思い、ルーシィもまじまじと見返すが、やはり見覚えはない。青い髪に顔には特徴的な紋様。
一度見たら絶対に忘れることはないだろうから、本当に初対面だろう。

「あの…何か?」
「いや。別に」

そう言うと、男性はすぐに別方向に去って行った。

「なんだろう…?」
「ルーちゃんが可愛いから見とれてたんじゃない」
「え〜まさか」
「そういえば、私さっきの人、見覚えあるような気もするけど」
「え?もしかして忘れてるだけで本当に知り合いだった?」
「う〜ん。さすがにそれはないと思うけど」

そんなことを言いながらも、二人はすぐにグレイへ視線を戻す。

グレイはバーカウンターまで行き、飲み物を注文していた。そして、グラスを受け取ると、またどこかへ向かう。
帰った先には、女性が待っていた。その女性はグレイからにこやかにグラスを受け取ると、それを飲む。

「うわ。これちょっとやばくない?」
「だよね。ジュビアが知ったら…」

ルーシィとレビィがそう思うのも無理はない。その女性はグレイが帰ってきてから、ずっとグレイの腕に自分の腕を回しているのだ。
嫉妬深いジュビアが知ろうことなら――。

「もう、知ってます〜」

突然背後から、おどろおどろしい声が聞こえてくる。
二人が振り返るとそこには鬼のような形相をしたジュビアが立っていた。







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