あたしだけがいつも意識しているんだ。
ナツの些細な言葉にも敏感に反応してしまう自分が嫌で――。

キスは彼なりの愛情表現…ううん、そんなはずはないから。


勘違いさせないでほしい。
けど、たくさんいる魔導士の中で、ギルドの女子の中で、ナツが一番に呼ぶ名は――


「ルーシィ!」と呼んでくれるナツの声が単純に嬉しく思う自分も居て。


あたしの中にある特別な想いは――気付いた時から溢れて止まらないんだ。



考えたくはないけれど――
ナツと出逢えたということは、いつかは別れも来るんだってこと。
恋をして知った現実。

そこから逃げたときもある。


でも、自分の気持ちがコントロールできなくなるほど、あいつのことが好きだから――
照れ隠しになってしまうが、心はナツを受け入れてしまうんだ。




ギルドから部屋に戻ると、ルーシィは鏡の中に映る自分の首元に目をやり、くっきりと跡が残るそれに触ってみる。

悪戯でも良い…そう思うのに。

「…悪戯じゃ、イヤ」

不意に本音が零れて、頬が赤く染まった。
そっと息を吐き出すと、ソファに座ってクッションを抱き締めた。






☆★☆★☆

「…首にすんのは嫌だったのか?」

ナツは上半身だけ起こして、小首を傾げた。
ルーシィに蹴られたお腹を擦りながら、もうその場には居ない彼女の後を追おうと立ち上がる。
すると、背後から名を呼ばれた。

「ナツ、ちょっと待って!」
「おう、ミラか…なんだ?」
「ルーシィ忘れちゃったのよ。コレ持って行ってあげて!」

意味深に微笑むミラジェーンから、よく見慣れた鞄を渡された。中には大事な財布と小説が入っている。
ナツはそれを掴んで、ギルドを後にした。







ルーシィが通った道は、彼女の香りを微かに感じる。
――それは嗅覚の優れた滅竜魔導士の能力があるから分かるのだろう。
しかし、彼の場合は特別に感じているのではないかと思わせることが多々あった。

走りながら、ナツはルーシィを思い浮かべる。


仲間たちと話している横顔に惹かれて、風に靡く金髪にも――つい目で追ってしまう。
ルーシィが泣いてる時、側に居てやりたい。自分を一番に必要としてほしい。

反応が面白いから、悪戯なんて何度もした。
怒らせて、ひどい時には口を聞いてくれないこともあったが、それでも一緒に居ると楽しいから。

自然に目が合うとすぐに笑顔を見せる――色んなルーシィを見せてくれる、そんな彼女に見惚れてしまうんだ。



――なんで、あいつ…「してみたい」ってこと、嫌がんだよ。


「…オレだからか?」

ナツは納得がいかないような、そんな表情をして足を止める。
俯いていた彼はギュッと鞄を持ち直して、ルーシィの部屋の窓を見上げた。





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