『憧れのキス。唇はどんな感じだろうか。…してみたいな』

ナツはルーシィの字で書かれてあった付箋を思い出していた。そのページに載っていた内容も思い浮かべる。
彼女のことだから小説で使うものなのだろうと一瞬思ったが、あの時は最後に書かれてあったルーシィの感情を表した言葉に目を留めた。

――おまえがしてみたいこと、オレがしてやんよ。




☆★☆★☆

ルーシィが目を覚ますと、目の前に広がる桜色――ナツがベッドの側で胡坐を掻いて、自分を見ている。
虚ろな瞳で彼を見つめていると、右手にあるギルドの紋章に口付けされた。

「……え、」
「おはよ、ルーシィ!こんなんで良いのか?けど、一つ目クリアだな!」
「…一つ目?」

ルーシィは不法侵入をされていることもすっかり頭から離れて起き上がると、ナツに放された右手を左手で撫でる。

「んじゃ、オレハッピー置いてきちまったから、戻るな!」
「ちょっとナツ!」

慌ててベッドから降りてマフラーを掴もうとしたが、一足早く窓から降りたナツを捕まえられなかった。

「昨日からなんなのよ!でもあいつ、一つ目って言ってたっけ。…二つ目もあるのかな」

鏡に映った自分が真っ赤な顔をしていることに気付き、もう少ししたらギルドに向かおうと着替えをしながら考えていた。



☆★☆★☆

「今日何日だったかしら…」

数日経ってもナツの言っていた二つ目は訪れる気配がなく、警戒はしているが変に意識した自分にバカみたいだと深い溜め息を吐く。

「…あたし、ナツを待ってるのかな」

ルーシィは小説を持ってギルドに向かう途中で、前から走ってきたレビィに呼び止められた。

「ルーちゃん!」
「あれ?レビィちゃんたち、今日は仕事に行ったんじゃなかったっけ?」
「うん、そうなんだけど…ガジルとナツが喧嘩始めちゃって」
「えっ!」

二人は急いでギルドに向かい、扉を潜る。息を整えてから騒ぎの方向へ目を向けると、

「オレにだってできる!…いあ、できたぞ!」
「ああ?…口じゃ何とでも言えるよな」
「見てろよ!証拠みせっからな!!」

余裕な表情のガジルの前で、睨んでいるナツが振り向いた。

「ルーシィ!」
「…っ!?」
「こっち来い!」
「来てるのわかってたの?」

さすが滅竜魔導士ね、と零しているが何をされるのかと身構えて距離を置く。
しかし、加減の知らない彼に肩を掴まれて引き寄せられた。

「二つ目飛び越えて、三つ目すっぞ?…じゃねえ五つ目だったか?」
「はい!?ちょ…ちょっと待って!」

ルーシィは近付くナツの顔を両手で覆い、顔を背けると――

「減るモンじゃねーだろうが!」
「……」

彼が何気なく発したのだろう…その言葉に胸が締め付けられる。
覆っていた両手の力が抜けると、それに気付いたナツがルーシィの首筋に吸い付いた。
ギルド内は大騒ぎで、耳が痛い。顔を逸らした際に、目が合った長い銀髪の彼女が微笑んでカウンターの奥へと消えていく。

「…ナツの、」
「んあ?」
「ナツのばかー!」

ルーシィキックがナツの腹部に直撃すると、倒れた彼の横を通りルーシィは真っ赤な顔をして鞄を持たずに駆け出して行った。






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