ナツに避けられてから数日が経過した。
いまだに自分にだけ距離を置く彼のそばに寄れないルーシィは、ギルドに居る時間も短くなっていく。
今日もまた、ギルドへ向かう足が重く感じて、支度に手間取っていた。
――もうだいぶナツの笑顔を見ていない。
話したいな、顔が見たい。
声が聞きたいよ、
……ナツ。
日に日に笑顔が見られなくなったルーシィを心配して部屋を訪れたハッピーは、鏡台の前でボーっと立っている彼女の肩に飛び乗る。
「…ルーシィ大丈夫?」
「ん?…大丈夫よ、それより今日仕事でしょ?」
「あい…」
エクシードに依頼が届いていたため、ハッピーはその仕事の前に寄ったのだった。
「気をつけてね、いってらっしゃい!」
窓から手を振るルーシィを振り返って見ると――彼女は眉を下げながらも笑っている。
「お土産買ってくるからね!」
ハッピーは手を振り返して、エクシードたちが待つ場所へ飛び立った。
――このままじゃ、ダメだ。あたしが、あたしから動かなきゃ。
間に挟まった状態のハッピーにも悪いと、ルーシィは気持ちを切り替えてギルドへと向かった。
☆☆★☆☆
扉の外にも聞こえるくらいの騒がしさ。ギルドに着くと、喧嘩の最中である集団へ目を向けた。
だが、お目当ての彼は居ない。
「…喧嘩しなくなったわね」
ナツらしくない。そんな彼は見たくないと、鞄をいつもの席に置いて外に出る。
日差しが眩しくて、顔を背けた先に大きな木が目に付いた。
その陰からマフラーが風に靡いているのが見えて、足音を立てないように近付いていく。
しかし、五感の鋭い彼だ、気配で気づいたのか立ち上がって走り出そうとした。
ルーシィは逃げられないようにマフラーを掴む。
「ナツっ!話があるの!すっごく大事な話!!」
「オレはねえし、放せって!」
一瞬、目が合ったがすぐに逸らされた。それでも、両手に力をこめてルーシィは叫ぶ。
「ナツ聞いて!今度は絶対本当のこと言うから、信じて!…お願い」
「……」
「夕方、あたしの部屋に来て!」
――勇気を出そう、今度こそ本当の気持ちを伝えるんだ。
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